地球型の系外惑星、発見か?
【2005年6月15日 国立天文台 アストロ・トピックス(110)】
惑星ハンターは、ついに“地球型の系外惑星”の発見に近づいてきたようです。6月13日、カリフォルニア・カーネギー惑星探査チームは、今まででもっとも軽い惑星を発見したと発表しました。この星の質量の推定値は、地球の5.9〜7.5倍程度で、これまでの記録のおよそ半分の値です。
1995年以来、太陽系以外の恒星のまわりで、150個以上の惑星が発見されてきました。太陽系以外の惑星という意味で、これらは系外惑星と呼ばれています。これまで発見された系外惑星は、観測の性質上、木星よりも重いものがほとんどです。発見の手法がドップラー法によるものがほとんどだからです。この手法は惑星の公転によって主星が揺さぶられるドップラー効果の量と、その周期を検出するもので、惑星の質量が大きいほど発見しやすいという特徴があります。岩石質の軽い惑星(地球型惑星)は軽いためなかなか発見されにくい状況でした。これまでで最も軽い系外惑星は、昨年の8月にヨーロッパ南天天文台が発表した地球の14倍程度の惑星でした(国立天文台アストロ・トピックス(44))。ただ、この重さだと、太陽系では天王星ほどの重さに相当し、必ずしも地球型と断定することはできません。
今回見つかった系外惑星は、地球からみずがめ座の方向に約15光年ほど離れた、グリーズ(Gliese)876という恒星のまわりを約1.94日でまわっているものです。この恒星は質量が太陽の三分の一ほどの、小さくて赤い、ごくありふれたタイプの星です。もともと、この星のまわりには、今回発表された惑星のほかに、公転周期が約30日と約60日の二つの木星サイズの大きな惑星を持つことが知られていました。その観測データをさらに詳しく解析した結果、研究チームはどうやら三つ目の惑星があるらしいことに気づきました。理論モデルによる検証と、ハワイ州にあるケック望遠鏡に搭載されている高分散分光器(HIRES)による観測データが、今回の発見の決め手になりました。
特筆すべきは、この惑星が地球と同じように岩石でできている可能性が高いことです。しかし、中心星からたった300万キロメートル、つまり私たちの太陽と水星の距離の十分の一の距離の場所を公転しているために、表面の温度は摂氏200度から摂氏400度に達していると予想されます。残念ながら、この惑星には生命の誕生は望み薄といえるでしょう。今回の発見は、アメリカの国立科学財団の記者会見で報告されました。
この研究チームは引き続き、グリーズ876の観測を続けると同時に、新たな地球型惑星の発見も目指しているようです。近い将来、本当に地球くらいの大きさの惑星が発見されるかもしれません。
(アストロアーツ注:) ケック天文台プレス・リリースでは、恒星グリーズ(Gliese)876と発見された系外惑星 Gliese 876bのアニメーションが公開されている。