こどもたちの提案による小惑星「ひびき」の誕生
【2006年5月12日 国立天文台 アストロ・トピックス(210)】
国際天文学連合・小惑星回報第56612号にて、昨年度に申請された小惑星(11494)Hibiki(ひびき)が正式に承認され、命名されたことが公表されました。
小惑星(11494)Hibikiは、2005年の宇宙の日にちなみ、福岡・北九州市で開催された「宇宙の日・ふれあいフェスティバル2005」の会場において、事前に公募した小惑星の名前の候補の中から、こどもたちの拍手により選出されたものです。
小惑星の名前の候補として、事前に44件の応募がありましたが、これを実行委員会で3つに絞り込みました。そして、ふれあいフェスティバルの当日、若田宇宙飛行士のトークショーに来場した参加者に拍手をしてもらい、今回は全員一致で会場のある北九州市の沖にひろがる「響灘(ひびきなだ)」にちなむHibikiを提案することが決まったのです。
この小惑星は、北海道在住のアマチュア天文家で北見在住の箭内政之(やないまさゆき)氏、札幌の渡辺和郎(わたなべかずろう)氏によって1988年11月に発見されたものです。こどもたちが宇宙への興味を持つきっかけになるよう、星に名前をつけるような取り組みができないか、という宇宙の日主催者会議の要望を受けての企画でしたが、渡辺氏に特別にご協力いただきました。命名提案権そのものは委譲できませんので、「宇宙の日・ふれあいフェスティバル2005」で、こどもたちが選んだ「ひびき」を、その経緯を添えて国際天文学連合に提案してもらったのです。
こどもたちによって命名された名前の小惑星は、2001年の「たこやき」(天文ニュース 550)、2002年の「しじみ」(同 634)、2003年の「きぼう」(同 698)、2004年の「ひむか」に次いで5番目となりました。
現在、この小惑星は、地球から約3億3千万キロメートルの距離にあり、いて座で19等星で輝いています。望遠鏡でも直接見るのは難しい淡い天体ですが、そこにはこどもたちの宇宙への夢がきらきらと輝いているにちがいありません。
なお、「宇宙の日・ふれあいフェスティバル2006」は、9月に石川県での開催が予定されています。
小惑星:太陽系の火星と木星の間には、小さな天体が無数に回っています。これらは小惑星と呼ばれます。小惑星は軌道がわかっているものだけでも約10万以上にのぼります。現在も続々と発見されており、発見した人が自由に名前を提案することができます。小惑星は太陽系が誕生したころの原始惑星が何らかの原因で粉々にくだけてできたり、それらのかけらが再び集まって形成されたと考えられています。(「太陽系ビジュアルブック」より一部抜粋)