MRO画像集:火星の歴史の断片

【2006年10月20日 JPL News Releases

NASAの火星探査機マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)は、11月からのミッション本番を前に機器のテストを兼ねた観測を行った。はやくも科学者の目を引くだけの結果が出ている。撮影された64か所に及ぶ地形には、さまざまな年代において水や氷が火星に刻んだ痕跡が見られる。


(MROによるMawrth Vallisの画像)

MROによるMawrth Vallisの画像。赤外線、赤、青緑の3波長で撮影した画像を合成して疑似色がつけられている。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Univ. of Arizona)

(MROによるSirenum Terraのクレーターの画像)

Sirenum Terraと呼ばれる地域に存在する名前のないクレーター内部。比較的新しいものと考えられる溝(小渓谷)がとらえられている。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Univ. of Arizona)

本格的な探査に向け、その第一歩を踏み出したMROが、9月29日から10月6日にかけて搭載機器の試験を行った。計64箇所を1週間ほどの間に撮影した試験データからは、火星の過去の気候や環境の変化に伴って形成された地形や地層の姿が明らかにされた。また、地上を移動する無人探査車オポチュニティーは、すでにMROからのサポートを受けている。ビクトリア・クレーターを探査するにあたって、MROが撮影した画像を使ってルートが決定されたのだ。ミッションの本番は、地球から見て火星が太陽から離れる11月上旬以降だが、準備運動の段階ですでにMROは活躍を見せている。

MROに搭載された高解像度カメラHiRISEによる地形画像が2枚公開された。

1枚目は、Mawrth Valliesとよばれる渓谷を撮影した画像だ。1ピクセルあたり25センチメートルという驚異的な解像度である。HiRISEとは別に搭載された分光器が測定したところによれば、画像中で明るく見えている部分には粘土鉱物が豊富に含まれている。粘土鉱物は、かつてその場所に長い間水が存在していた証拠となる。そうした場所こそ、古代火星の生命にとって好ましい環境であっただろう、とMROの分光器主任研究者 Scott Murchie博士は指摘している。

粘土鉱物を形成するほど水が豊富に存在した時代は、数十億年ほど前のことだと考えられている。2枚目の画像は、無名のクレーター内を走る小渓谷のクローズアップで、比較的新しい時代の地形だ。HiRISEの高い感度のおかげで、山の影となっている部分でも、色が容易に判別できる。比較的新しい地形ではあるが、複雑に走る溝の形は、少なくとも部分的には水に削られたものだと見られる。