2006年11月の星だより

【2006年11月1日 アストロアーツ】

流星が突発的に流れたり、彗星が突然明るくなったり…今年は予想もしなかった天文現象に驚かされることが多いですね。今月はどんなことが起こるのでしょう。「予想済み」な事だけでもじゅうぶん盛り上がれそうな、今月注目の現象や天文学の話題を紹介します。


次回は26年後!黒い水星を見逃すな

(水星の日面通過再現図)

11月9日午前9時、東京から見た水星の位置。詳しい図は特集ページ参照(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

ふだん星空を眺めることが多くても、太陽系の第1惑星・水星を見たことがない方は多いのではないでしょうか。今月は、その水星が一番の見どころです。ただでさえめったに見られない水星の、とても珍しい姿を見てみませんか?

11月9日の早朝、地球から見て水星が太陽の前を横切る「水星の日面通過」が起こります。いつも太陽からあまり遠ざからないため輝きをとらえにくい水星ですが、いっそ重なってしまえば話は別。黒点よりもさらに暗い小円として、太陽の光球をバックにはっきりと見えることでしょう。ただし、太陽を見ることになるので必ず安全な方法で観察してください。望遠鏡などで拡大することになりますが、太陽投影板に投影するか、正しいフィルターを使って減光しましょう。詳しくは特集ページをご覧ください。

水星は太陽の周りを88日で1周してしまいますから、1年間に何回も地球を追い越すことになります。しかし軌道の傾きの関係から、太陽と地球を結ぶ線上を水星が通ることはめったにありません。今回の日面通過を見逃すと、国内では実に26年間もチャンスがないのです。

どうせだから輝いている水星も見たい!という方には月末にチャンスがあります。9日に太陽の前を通過したばかりの水星が、25日には早くも太陽から一番遠ざかるときを迎えるのです。太陽から見て西側にあるので、「西方最大離角」と言われる状態です。地上からは、太陽が昇る直前の東の空低くに見えます。明け方の水星としては今年もっとも高くて見やすい(とは言っても、東の地平線がじゅうぶん開けているところで見ることをおすすめしますが)ので、早起きしてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。光度もマイナス0.5等級と、肉眼で簡単に見つけられる明るさです。

満月前後の月に注目

(すばる食再現図)

11月7日未明に東京から見たすばる。月の位置は右が午前0時、左が午前2時。詳しい図は特集ページ参照(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

11月5日は満月ですが、その前後、3日と7日(未明)に月を眺めてみましょう。

10月6日(旧暦8月15日)は中秋の名月や十五夜と呼ばれ、お月見をした方も多いのではないでしょうか。一方、11月3日(旧暦9月13日)は「栗名月」「十三夜」と呼ばれ、やはり伝統的にお月見をする風習があります。中秋の名月に比べてあまり知られていませんが、片方しか見ないのはとても無粋とまで言われています。少しだけ欠けた月の、微妙な表情を観察してみましょう。

一方、満月過ぎの11月6日から7日にかけては、以前から注目していた天文ファンも多いのではないでしょうか。今年最大級の見ものと言われていたのが年6回の「すばる食」、すなわち月がすばる(M45、プレアデス星団)の星々を隠す現象でしたが、その6回の中でもっとも好条件のすばる食がこの夜に見られるのです。満月のすぐ後だけあって月がまぶしいですが、高度、隠される星の数ともに申し分ありません。双眼鏡や小型望遠鏡を使って観測すると見やすいでしょう。

油断はできない、しし座流星群

2001年に歴史的な大流星雨を見せて以来、しし座流星群の出現数は1時間に10個程度という平凡なものに戻ってしまいました。しかし、2001年の大出現を計算に基づき予測することに成功したアイルランドのアッシャー博士は、「2006年にヨーロッパとアフリカ西部で1時間あたり100個の出現が見られる」と予報しています。残念ながら流星の出現がピークを迎えるころには日本は昼間ですが、月明かりもありませんし、観測に出かける価値はありそうです。

それに、予想を上回る出来事が起こる可能性もあります。先月このコーナーで「双眼鏡で見える」と紹介したスワン彗星は、急激に増光して肉眼で見えるほどになりました(11月上旬も、月明かりに邪魔されますが双眼鏡で探せる明るさが続きそうです)。「1時間に10個とあまり派手さのない流星群」と紹介したオリオン座流星群は、1時間に100個近い突発出現を見せました。2001年の再現は無理だとしても、ちょっと多めに流れるのを心の隅で期待したいものです。

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