2006年しし座流星群予報:
例年以上の出現が期待されるも、日本では極大を観測できず
【2006年11月9日 アストロアーツ】
2001年にしし座流星群の大出現が起きてから、もう5年が過ぎようとしています。ここ最近目立たないしし座流星群ですが、出現予想の権威であるアッシャー博士によれば、11月19日はひさしぶりに1時間あたり100個を超える出現が見られそうです。残念なことに、そのとき日本は昼間ですが、ピークから外れても18日から19日にかけては観測に挑戦する価値があると言えるでしょう。
毎年、11月18日ごろは、「しし座流星群」が出現のピークを迎える時期です。
かつて、しし座流星群の出現予想はごく単純で、「例年は平凡な流星群だが、母天体(テンペル・タットル彗星)が地球付近を通る33年ごとに大出現する」というものでした。そのたびに新鮮なチリが供給されるからです(解説参照)。しかし、北アイルランドArmagh天文台のデイビッド・アッシャー(David Asher)博士が発表した論文によって、状況は大きく変わりました。
アッシャー博士は、一番新しいダストトレイル(解説参照)だけでなく、過去数周の間に彗星が残したダストトレイルの位置をも正確に計算する方法を確立しました。そして、それらのトレイルの中を地球が通るかどうか調べることによって、精度の高い予想に成功したのです。前回テンペル・タットル彗星が地球軌道に接近したのは1998年。その直後の1998年や1999年よりも、数年経った2001年と2002年に大出現が起きることを、見られる場所や時刻も含めてほぼ正確に当てました。
さて、2001年に日本で、2002年にアメリカなどで1時間に数千個という規模の大流星雨が観測されてからは、アッシャー博士の予想どおり、数年間目立った出現はありません。しかし博士によれば、2006年には中規模の出現が起きるそうです。1932年に形成されたダストトレイルのほぼ中心を地球が通るからです。2001年や2002年のような出現はありそうにないが、ヨーロッパなどで1時間あたり100個以上の流星が見られるとのことです。
ひじょうに残念なことに、ピーク予想時刻は日本時間の11月19日午後1時45分。19日未明はダストトレイルにさしかかる前で、20日になると通り過ぎています。とはいえ、観測をあきらめてしまうのももったいないでしょう。
何より、必ずしも予想どおりに起きるとは限らないのが流星群の出現です。10月には、「1時間あたり10個程度」と誰もが予想していたオリオン座流星群が、1時間あたり約100個という突発的な出現を見せて観測者を驚かせたのは記憶に新しいところです。もちろん、それに比べてしし座流星群は事前の研究が進んでいるのですから、予想に反して日本で突発的出現、を期待するのは難しいでしょう。しかし、全体的な活動はそれほどでもなかった1998年に、驚くほど明るい火球(金星よりも明るい流星)が流れた例もあります。しし座流星群には明るい流星が多いので、出現数以上に印象に残るかもしれません。
出現数以外の条件は、この上ないほど良いと言えるのではないでしょうか。まず、新月に近いので月明かりの心配はほとんどありません。さらに、土曜日から日曜日にかけての現象であることも考えれば、見逃す理由はありません。しし座流星群を観測するのに適した時間帯は、夜半過ぎから薄明にかけてです。観測の際は寒さ対策を万全に。
彗星と流星の関係
流星をもたらしているのが彗星。彗星は大量のガスやチリを放出しながら公転しているので、彗星軌道のそばにはチリの流れができている。それが地球の軌道と交差していると、そこに地球がさしかかった際にチリが地球大気に衝突して発光し、流星となって観察される。チリは彗星が描く楕円軌道に沿って漂っていて、「チリの通り道」という意味で「ダストトレイル」と呼ばれることもある。毎年、同じ時期に流星群が見えるのは、地球の公転軌道とダストトレイルが交差する地点が決まっているからだ。流星群をもたらす彗星は母天体と呼ばれる。(150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室(Q76:流星って彗星のお土産?) より[実際の紙面をご覧になれます])