次々と見つかる太陽の「ご近所さん」

【2006年11月20日 NOAO News

われわれの近くに存在する20個の暗い恒星系(連星含む)の発見が新たに報告された。太陽から10パーセク(約33光年)以内に存在することが知られる恒星系は、2000年以降で16パーセントも増えたことになる。


(惑星質量天体連星の想像図)

RECONSが発見し距離を求めた恒星系の1つ、SCR 0630-7643 ABの想像図。われわれから8.8パーセク(28.7光年)の位置にあり、恒星どうしは太陽から土星よりもやや近い距離で、50年かけてお互いの周りを回っている(提供:Zina Deretsky/National Science Foundation)

今回の発見を発表した「近傍恒星研究コンソーシアム(RECONS)」は、1999年以来チリにあるセロ・トロロ汎米天文台で太陽の近くに潜む恒星を研究し続けている研究者のグループだ。年周視差(解説参照)を調べることで恒星までの距離を求め、太陽から10パーセク(約33光年)以内にあるものを探している。

RECONSが目指すのは、「ご近所」にいる恒星の質量、年齢(恒星としての進化の段階)、家族構成(連星を形成しているかどうか)などを徹底的に調べ上げることだ。そうすることで、われわれの天の川銀河全体の「人口統計」についても見通しが得られる。

新たに見つかった20個の恒星系(連星も1個と数える)は、すべて赤色矮星。恒星の中でも特に小さくて暗く、どんなに太陽に近くても、肉眼で見えるものは1つもない。しかし、太陽から10パーセク圏内にあるとわかっている348個の天体のうち、239個(約69パーセント)は赤色矮星だ。天の川銀河全体で見ても、もっとも典型的な住人であろうと考えられている。

今回発見された恒星系のうち7個は、太陽に近い恒星系のベスト100にランクインした。中には、23番目および24番目に近いものもある。また、2000年以降見つかった太陽近傍の恒星系は、RECONSによって8個、他のグループによって6個存在し、今回の発見とあわせて6年で16パーセントも増加したことになる。

ご近所は、今後も次々と増えそうだ。RECONSの研究者によれば、10パーセク以内にありそうだがまだ正確に距離が測定されていない「順番待ち」の天体は、尽きそうにないという。

年周視差と距離の測定

地球から恒星までの距離を求めるには、三角測量の原理を使う。離れた2点から星を観測して星の位置のずれを角度として求めれば距離がわかるということだ。たとえば春分の日にある星がどの方向に見えるか角度を観測。それから半年たった秋分の日に、同じ星が今度はどの方向に見えるかを観測する。角度さえわかれば直角三角形の辺の比を使うことで、地球から星までの距離が地球と太陽の距離の何倍かを計算することができる。このようにして地球の公転運動に伴ってできる星の位置のずれを「年周視差」と呼んでいる。(「150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室」Q.115 恒星までの距離はどうやって測る? より一部抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])