2006年12月の星だより

【2006年12月1日 アストロアーツ】

何かと忙しい年の瀬ですが、空の方ではもっとも星が美しい季節が始まろうとしています。天文の世界でさまざまなことがあった2006年ですから、天文に触れながら締めくくりたいものです。今月注目の現象や天文学の話題を紹介します。


ふたご座流星群は宵のうちがチャンス

(ふたご座流星群イメージ図)

ふたご座流星群イメージ図。放射点の位置など、詳しい星図は特集ページ参照(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

12月は1年でもっとも日が沈むのが早い季節です。夜空を見上げる機会も多くなることでしょう。ただし、日が沈んで薄明が終わったばかりのころは、まだ冬の美しい星座を見るには早い時間です。オリオン座をはじめとした1等星だらけの星座たちは、まだ東の地平線付近にあります。でも逆に言えば、今月は明け方までの間、冬の星座は一晩中見えていることになります。そんな冬の星座の1つに、ふたご座があります。

そのふたご座に放射点がある「ふたご座流星群」が、14日の深夜に出現のピークを迎えます。「ペルセウス座流星群」、「しぶんぎ座流星群」とともに三大流星群に数えられる流星群ですが、毎年安定した数の出現を見せてくれます。なんと言っても放射点がほぼ一晩中夜空に出ているので、実際に見える流星の数は、年間最多となることもしばしば。

あいにく今年は、夜半を過ぎたころに月が昇って暗い流星をかき消してしまいます。それまでは最高の条件ですから、観測や撮影に挑戦してみましょう。

惑星は明け方の空に

(水星と木星の接近の様子)

12月11日午前6時、水星と木星の接近の様子。視野円は0.3度。木星の右1度足らずの位置には火星もある。クリックで拡大(ステラナビゲータ Ver.8で作成)

2006年といえば「惑星」が騒がれた年ですが、ここしばらく夜空であまり惑星が目立たない時期が続いていました。おもな惑星が、地球から見てことごとく太陽の裏側に回っていたからです。このうち地球の外側を回っている火星、木星、土星は、現在明け方の空に登場しています。

土星は一足早く、真夜中ごろには東の空で輝いています。それに対して火星と木星は朝焼けの中でようやく、東の地平線付近に登場します。今月注目したいのは、低くて見つけにくい火星と木星の方です。上旬から中旬にかけては、すぐ近くに水星もあるからです。9日から13日にかけては、双眼鏡で3惑星を同時に見ることができます。さらに11日の朝は、水星と木星が望遠鏡の視野に収まるほど接近します。

どの惑星も、地球ではまだまだ観測シーズン本番とは言えませんが、惑星へ送り込まれた探査機にとっては、いつも観測本番です。今年は土星探査機カッシーニと、数多くの火星探査機から届けられた画像の数々が印象的でした。今月も新たな驚きに期待したいところです。火星探査機の最古参「マーズ・グローバル・サーベイヤー」の観測が終了となりそうだという残念なニュースが入ってきましたが、その分、到着したばかりの最新機「マーズ・リコナサンス・オービター」に期待しましょう。

さまざまな分野で、1年を締めくくる出来事

今年も宇宙物理学の分野では、数々のニュースがありました。特に宇宙論は、計算だけでなく観測が成果に結びつくようになっています。この時代を切り開いたと言えるのが宇宙背景放射探査衛星(COBE)による「宇宙背景放射の撮影」で、今年のノーベル物理学賞はCOBEの開発と運用に中心的な役割を果たした2人の研究者に与えられます。2人の受賞スピーチは8日、授賞式は10日の予定です。

2006年は、日本の宇宙開発にとって良い年だったと言えるでしょう。ロケット打ち上げと人工衛星の軌道投入はどれも成功して、赤外線天文衛星「あかり」や太陽観測衛星「ひので」は次々と成果を出しています。今月の16日には、技術試験衛星「きく8号」がH-IIAロケットによって打ち上げられます。最後の打ち上げも成功させて1年を締めくくってほしいものです。

さて、今年の観望納めといえば、やはり大晦日31日のすばる食ではないでしょうか。散開星団M45(すばる、プレアデス星団)が月に隠されるのは、今年に入ってから6回目となります。星が隠されるのは18時から21時にかけて。月に比べて星が暗いので、双眼鏡を用意したいところです。

夜空が美しくなるとともに気温が下がるので、寒さ対策は万全に。それでは、どうぞよいお年をお迎え下さい。

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