メタンの雨を降らす? タイタンの北極を覆う巨大な雲
【2007年2月6日 Cassini-Huygens News Release】
NASAとESA(ヨーロッパ宇宙機関)の土星探査機カッシーニの観測によって、衛星タイタンの北極上空に巨大な雲が発見された。昨年、タイタンの北極地方に多数の湖が発見されているが、このように巨大な雲がメタンなどを降らせることで形成されたのかもしれない。
雲は北極から北緯62度まで広がっている。差し渡し2400キロメートルで、日本の12倍に相当する面積をすっぽり覆っている。カッシーニの可視・赤外分光観測装置が撮影した。
昨年、タイタンの北極地方に多数の湖が見つかり、メタンを降らせる「雨雲」の存在が予想されていた。しかし、タイタンは今まで北極地方が日光に照らされない「冬」の時期にあったため、可視光などで観測することはできなかった。タイタンに春が訪れたことで、巨大な雲が姿を現したのだ。
「絶対に雲があるだろうと確信していましたが、まさかこれほど大きいとは思いませんでした。タイタンにおける有機物の循環を探る鍵となるでしょう」とカッシーニの可視・赤外分光観測装置チームのメンバーであるナンテ大学のChristophe Sotin博士は話す。地球で水が雨として降り、川を流れ海にたまり、蒸発して雲となるように、タイタンではメタンなどの有機物が循環していると考えられている。
タイタンの雲は季節と共に変動するようだ。土星は30年弱で太陽の周りを1周するので、タイタンの春夏秋冬は7年ほどで交代する。冬の間、北極付近には巨大な雲が居座って雨を降らせ、多数の湖を作った。その間、カッシーニが南極付近で見つけた湖はたった1個だ。春から夏にかけ、雲が北極から南極へ移動し、湖の個数も逆転するだろうと科学者たちは予想している。
カッシーニは2007年中に何度もタイタンへ接近するので、雲の時間変動が追えるだろうと期待されている。