24年ぶりに増光したてんびん座GW

【2007年4月17日 アストロアーツ】

変光星観測者や研究者の世界は、4月12日(日本時間)以来「てんびん座GW」増光の話題で大騒ぎだ。てんびん座GWは増光間隔がとても長いタイプの変光星で、今回が観測史上24年ぶり2回目。しかも、まさに増光直後から観測されているので研究にも大きく貢献しそうだ。滋賀県ダイニックアストロパーク天究館の高橋進さんから解説をお寄せいただいた。


(てんびん座GWの写真)

てんびん座GWの写真(中島和宏さん撮影)

(てんびん座GWの光度曲線)

てんびん座GWの光度曲線(横軸に時間、縦軸に等級を取ったグラフ)。クリックで拡大(VSNETより)

4月12日(日本時間)にオーストラリアのRod StubbingsさんよりVSNET-alert(変光星観測者のメーリングリスト)に「てんびん座GW増光!」という報告がありました。

てんびん座GW(以下、GW Lib)とは1983年8月10日にチリのGonzalezさんが9.0等の新星らしい天体として発見した星です。ただこのときは発見後に世界に公表されるのが遅く、8月18日に10.0等、9月1日に14.0等という観測が残るだけで詳細はわからず、減光速度の速い新星ではないかと思われていました。しかしその後になって増光前のこの位置に18.5等の星があることがわかり、増光幅9等と新星としては増光幅が小さいことや、ふだんの状態でのスペクトル観測などでも矮新星(解説参照)に似ていることから、京都大学の加藤太一さんらからWZ Sge(や座WZ)型激変星ではないかとの指摘がされていました。WZ Sge型とは矮新星の中でも増光間隔が長く、一方でたいへん大きな増光を起こす変光星です。それ以来、この星がやがて増光を起こすのではないかと、熱心な観測者によってモニターが続けられてきました。

今回の増光では前日に長崎県の前田豊さんやStubbingsさんが観測されていますが、そのときは15等以下だったことから、まさに増光直後にとらえられたタイミングのよいものでした。その後GW Libはどんどん明るくなっていき、13日には8等台にまで明るくなり、その後はゆっくりと減光しつつあるようです。またここ数日の東広島天文台や、京大チーム、中島和宏さんらの観測から早期スーパーハンプ(early superhumps)らしい光度変化もとらえられています。早期スーパーハンプとは、WZ Sge型激変星が増光を起こすときに降着円盤に腕状の密度模様が現れて起きる光度変化で、WZ Sge型激変星特有のものといわれています。今まさに観測が進行中ですが、今回の増光が激変星研究を大きく進めてくれるものと期待されています。

なおGW Libは4月17日現在でまだ9等で見られています。この後急速に暗くなっていくことと思われますので、ぜひこの機会にご覧ください。星図は日本変光星研究会のホームページに渡辺努さん作成のものが載っていますので、ご利用ください。

矮新星

激変星の一種で、新星のように突然増光を示すが、その規模がかなり小さいもの。増光の期間は間欠的で、近接連星系内で白色矮星に流入するガスがつくる降着円盤が、不安定を起こしているものと考えられている。(「最新デジタル宇宙大百科」より)

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