オリオンの頭上で産声をあげた星たち
【2007年5月22日 Spitzer Space Telescope Newsroom】
NASAの赤外線天文衛星スピッツァーが、オリオン座の頭にあたる領域で生まれたばかりの星をとらえた。ここにはとても暗くて無名に近かった星雲が広がっているが、赤外線で見るとひじょうに興味深い観測対象だ。
星が誕生する現場と言えば、真っ先にあげられるのがオリオン座大星雲M42だろう。この星雲は「狩人」オリオンの腰付近に存在し、肉眼でも見えるほど明るい。それに対し、目に見える光では目立たないものの興味深い星形成領域をスピッツァーが撮影した。この領域は「バーナード30」と呼ばれ、われわれから約1300光年の距離にある。
可視光では暗くしか見えない星雲だが、スピッツァーの赤外線の目では細かな構造も見えてくる。画像は赤外線データに疑似色をつけたもので、緑は特殊な炭化水素の分子、赤茶色はちりの分布に相当する。星雲の内外に星が点在しているが、ピンク色に輝いているのがバーナード30の中で誕生したばかりの赤ちゃん星だ。300万年前に付近で起きた超新星爆発が誕生をうながしたと考えられる。
この領域には質量の大きな星、小さな星、褐色矮星(かっしょくわいせい:恒星として輝くほど質量を集められなかった天体)などが集まっていて、研究者にとっては宝の山といえる。スペインの宇宙物理・基礎物理研究所(LAEFF)のDavid Barrado y Navascués氏は、「バーナード30には理想的な若い星団が存在しています。そのため、今後恒星の物理を明らかにする上で重要な観測対象となることは間違いありません」と話している。