ばら星雲内部の若い星の姿があらわに、非対称ジェットも存在か?
【2004年1月30日 NOAO News】
冬の有名な天体の1つである散光星雲「ばら星雲」で、通常は分子雲によって隠され可視光では見ることのできない若い星とそこからのびるジェットの姿が捉えられた。これは、近くにある大質量星からの強い紫外線放射によって分子雲が取り払われたためだ。原始星や褐色矮星などを可視光で調べることができる、ほんの数例しかない貴重な研究対象の発見である。
地球から1500光年離れたいっかくじゅう座に位置するばら星雲は、電離水素が広がっている領域で、散開星団NGC 2244の中心にある高温の星々からの強い恒星風によって穴を削られたような姿をしている。この領域ではまさに星の形成が進行中で、300万歳程度の若い星々がひしめいている。
アリゾナ州・キットピークにあるウィスコンシン・インディアナ・イェール・NOAO(WIYN)望遠鏡による観測から、原始星から8000天文単位(約1兆2000億キロメートル)以上ものびているジェットが見つかった。このジェット、ハービッグ・ハロー天体「Rosette HH1」には明るいこぶなどが見られるが、これらは高速で自転する原始星から秒速およそ2,500kmで撃ち出された物質の「弾丸」だと考えられている。
さらに、ジェットの反対側にはバウ・ショック(衝撃波)が見られるが、これはジェットの反対方向に別の縮退したジェットが存在していることを示唆している。もしこれが本当に対のジェットであれば、双極ジェット(両方向へとのびるジェット)が単極ジェット(あるいは、極端に非対称的な双極ジェット)へ進化するという現象について唯一の観測的証拠となる。この現象から推測すると、原始星の周りにあった降着円盤が蒸発してしまい、低質量の天体が残されのではないかということだ。
オリオン大星雲などにも今回発見されたのと同様の孤独な原始星が見られるが、ひょっとすると、ばら星雲で発見された天体から推測されるような過程を経て、超低質量星や褐色矮星などの天体が残されるのかもしれない。今回の発見によって、原始星や褐色矮星の研究が進むことは間違いなさそうだ。