木星が見せた劇的な縞模様の変化
【2007年6月29日 Hubblesite Newscenter】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、木星で起こった劇的な変化をとらえた。2005年12月の「中赤斑」出現以降の大変化だ。
木星では、時速数百kmの風が吹いており、雲の形がたえず変化している。木星には白や黄色、茶色の縞模様があるが、この模様は緯度によって風が異なる方向へ吹いているために現れる。さらに、白く明るい領域では大気が上昇していて、色が暗い領域では大気が下降している。これら2つの大気がぶつかると嵐が起こる。
HSTによる2枚の画像のうち、左側は今年の3月25日に撮影されたもので、赤道の上部に白い雲がつくる幅の狭い縞が見えている。白いということは、雲が高い高度に存在している証拠だ。この白い色が、6月5日に撮影された右側の画像では茶色に変わっていることから、雲が木星の大気の下に隠されてしまったことがわかる。そのほか、赤道付近にある小さな渦にも変化が見られる。
木星の模様が短期間に急激な変化を見せた例は、過去にもある。初めて観測されたのが1980年代、続いて1990年代初めにも地上の望遠鏡によって観測されたが解像度がじゅうぶんではなかった。今後行われるHSTの画像の分析では、この現象に関する理解が進むことが期待されている。
木星の表面
木星の表面には、はっきりとわかる縞模様がある。縞模様の正体は、アンモニアの氷の粒でできた雲。上空では、強風が東西方向に交互に吹いている。雲はこの強風や木星の速い自転スピードで引き伸ばされていて、同じく東西方向に伸びている。縞模様には、明るい帯の部分と暗い縞の部分がある。これは、雲の厚さや雲の粒の大きさの違いによって生じていると考えられている。詳しく見ると、帯や縞の内部や縁の雲が風に乱されて小さな渦や波のようになっているようすもわかる。(「太陽系ビジュアルブック」より)