土星の衛星イアペタスは急速に形成された
【2007年7月25日 JPL News Releases】
土星の衛星イアペタスには、赤道に沿って長さ1000km以上も連なる山脈が見つかっている。この筋のような特徴的な地形が存在する理由は、イアペタスが太陽系誕生後まもなく形成され、その後急速に冷えたためらしい。
2005年にNASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の土星探査機カッシーニが、土星の衛星イアペタスの赤道と同じ位置に幅約20km、長さ1300kmにわたって山脈が存在しており、くるみを思わせる形をしていることを明らかにした。しかし、なぜこのような山脈が形成されたのかは、発見当時はよくわかっていなかった。
山脈の形成に関する研究成果を発表したのは、NASAのジェット推進研究所でカッシーニ計画にたずさわるJulie Castillo氏らのチームだ。
Castillo氏らの研究によれば、形成間もなく、まだどろどろに溶けていたころのイアペタスは、現在の約80日という周期に比べてずっと高速で自転していたということだ。高速回転によって衛星の形は横にふくらんだ楕円体となったのである。
やがて時間の経過とともに表面が冷えて固まり、土星の重力の影響で自転速度は遅くなった。形がもとに戻ろうとして内側だけが縮んだ結果、外側の余った地殻がそのまま山脈になったのだ。
以上のようなプロセスが起こるには、最初、氷が溶けるような暖かい温度であったイアペタスが、やがて急速に冷えたと考えなければならない。研究チームは、熱源を岩石に含まれるアルミニウム26などの放射性元素だったと結論づけている。放射性元素は一定のペースで熱を出しながら別の元素に変化するのだが、アルミニウム26は寿命が短く、急速な加熱と冷却が説明できる。
惑星や衛星の材料となる微小天体にアルミニウム26などが含まれていたのは、太陽系誕生後の限られた時間だったとわかっている。今回の研究は、イアペタスが太陽系と同じころに誕生したことを示す結果となった。