VLT干渉計、星が吐き出した煙を撮影

【2007年8月14日 ESO Press Release

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の巨大望遠鏡(VLT)干渉計が、ある種の変光星をズームアップし、周囲を取り巻くちりの雲を撮影することに成功した。この雲は、星がときおり急減光する原因と考えられている。


(R CrB型星の想像図)

ちりにおおわれたR CrB型星の想像図。クリックで拡大(提供:ESO)

(VLT干渉計がとらえたRY Sgr)

VLT干渉計がとらえた、RY Sgrをとりまく雲。左右は、異なる波長の赤外線で撮影した画像。クリックで拡大(提供:ESO)

撮影されたのは約6,000光年の距離にある恒星「いて座RY(RY Sgr)」。RY Sgrは「かんむり座R(R CrB)型星」と呼ばれる変光星の一種で、予期できないタイミングで明るさが平常時の数千分の1にまで落ちる。減光は数週間のうちに進行し、その後ゆっくりと回復する。

R CrB型星の正体は、大きさが太陽の50倍ほどもある巨星だ。外層の物質は重力を振り切って吹き出ているが、時間とともに放出された物質の中で炭素のちりが形成され、「煙幕」となって星の光をさえぎる。こうして減光が起きるのだろうと考えられている。「煙幕」はやがて、新しく吹き出てきた物質に押しのけられ、晴れ上がっていく。

R CrB型星を代表するかんむり座R(R CrB)の減光は1795年、今回撮影されたRY Sgrの減光は1895年から知られていた。「煙幕」が減光を引き起こすという仮説も古くから提唱されていて、ほぼ定着している。しかし、「煙幕」のスケールは地球から見ればとても小さいので、実際に観測できたのはごく最近のことだ。

フランスとブラジルの研究チームは、南米チリにあるESOの8.2メートルVLTを使ってRY Sgrを観測した。チームは、4台あるVLTを組み合わせることで高い解像度を得られるシステム「VLT干渉計」を利用し、2004年に「煙幕」を検出することに成功した。

「煙幕」が一番明るく見えるのは、RY Sgr本体の半径に比べて何百倍も離れた位置だった。その後チームは観測を重ね、今回の発表によれば、半径の100倍離れた位置の煙幕を検出している。これは太陽系で言えば海王星の軌道に相当するが、6,000光年も離れた恒星であることを考えると驚異的な解像度だ。

「しかしながら、これではまだ遠すぎるのです。吹き出した物質の中で『煙幕』が形成される位置には諸説あるからです」と研究チームを率いたPatrick de Laverny氏は語る。RY Sgrから吹き出した物質の移動速度は秒速300キロメートルと見積もられるが、そうだとすれば「煙幕」の部分が放出されたのは発見の時点より6か月も前のこと。「R CrBの特性が発見されてから200年たちましたが、R CrB型星が引き起こす現象はまだまだ謎だらけなのです」

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