「すざく」の論文、最近の宇宙科学分野で引用数ナンバー1に
【2007年9月11日 JAXA / ESI Special Topics】
米国の調査会社は、日本のX線天文衛星「すざく」を紹介した論文が、過去2か月に宇宙科学分野でもっとも多く引用されたと発表した。「すざく」が多くの成果をあげ、国際的に注目されていることが、データからも示された。
科学技術情報を調査・分析する米国のトムソンサイエンティフィック社は、同社の論文データベースを分析して「ホットな論文」を発表している。これは過去2年間に出版された論文で、ほかの論文で引用された回数が上位0.1%に入ったものを指す。
さらに同社は、新しく「ホットな論文」に加わった論文のうち、過去1年間に出版され引用回数がもっとも多かったものを隔月で発表している。それは過去2か月に各分野でもっとも注目された論文といえる。2007年9月に宇宙科学(天文学・宇宙物理学全般を含む)の分野でとりあげられたのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部の「すざく」プロジェクトマネージャー満田和久教授らによる論文"The X-ray observatory Suzaku"だった。
同論文は日本天文学会欧文研究報告(PASJ)の2007年1月号に掲載された。2005年7月10日に打ち上げられたX線天文衛星「すざく」について、運用状態や科学機器の性能を紹介し、さらに科学的成果の可能性にも触れている。
満田教授はトムソンサイエンティフィック社のインタビューに答え、引用回数が多かったことについて「打ち上げから2年が経過した今、観測機器から得られた科学的成果が学術誌に登場するようになってきたのでしょう」と述べた。
ある観測装置のデータを用いた論文は、その観測装置を紹介した論文を引用することが多い。「すざく」の紹介論文が多く引用されたということは、「すざく」がそれだけ多くの科学的成果をあげたことを意味する。
今後の研究の展望について満田教授は「直接観測できる物質のおよそ90%は絶対温度百万度以上の状態にあります。こうした、宇宙を満たす高温の物質はX線でなければ直接観測できません。その分布、温度、巨視的な動きなどは宇宙の歴史を反映しています。しかしながら、これらはじゅうぶん観測されてもいませんし、理解もされていません。これが、『すざく』が挑むもっとも重要な分野の1つです」と語った。
また、「一般の方も天文学、とりわけブラックホールや宇宙論には結構興味を持っていると思います。『すざく』の報道はかなりの反響を呼んでいます」と、「すざく」が研究者のみならず社会全般からも注目されていることへの手応えを示した。