初期宇宙の「ブロック」銀河
【2007年9月18日 HubbleSite / Spitzer Space Telescope】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)と赤外線天文衛星スピッツァーの画像から、質量がわれわれの天の川銀河の1パーセントにも満たない銀河が見つかった。観測されたのは、ビッグバン後わずか10億年程度の宇宙。小さな銀河は大きな銀河を形成する「ブロック」のような存在とみられている。
小さな銀河が見つかったのは、ろ座の方向にある「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド(HUDF)」と呼ばれる領域だ。HSTが2004年に撮影した画像には、はるか遠方の銀河が無数に写っている。
米国と中国などの研究グループがHUDFの銀河を調べたところ、水素ガスの輝きが目立って明るいものが見つかった。研究グループがスピッツァーも動員して詳しく観測した結果、9つの銀河について、質量がわれわれの天の川銀河の100分の1から1000分の1しかないことが判明した。また、どの銀河の年代もビッグバン後わずか10億年程度。初期宇宙でこれほど小さな銀河が見つかったのは初めてのことである。
HSTは、生まれて間もない星が放ったと考えられる青い光をとらえていた。一方、スピッツァーの観測では赤外線をほとんど検出できなかった。これは、成熟した星や、星から放出されたダストが少ないことを意味する。9つの銀河はビッグバンで形成された水素やヘリウムの中から直接生まれた「第1世代」の銀河に違いない。
9つの銀河のうち3つは、オタマジャクシのように引き延ばされた形をしている。これは近傍の銀河と相互作用した結果であり、やがて合体して大きな銀河となるかもしれない。
最近の銀河形成論によれば、宇宙で最初に誕生した銀河は小さなもので、その銀河がブロックのように合体することで天の川銀河のようなサイズの銀河へ成長した。今回見つかった9つの銀河は、まさしく最初に誕生した「ブロック」であり、大きな銀河を組み上げる途上にあるのだ。