「すざく」、100億年前に起こった大規模な重元素のばら撒きの証拠をつかむ

【2007年9月26日 大阪大学大学院理学研究科

日本のX線天文衛星「すざく」による観測で、銀河団から500万光年ほど離れた領域に、一様に広がった淡いガスの放射がとらえられた。これは、約100億年前に一斉に爆発した超新星によって、宇宙空間に重元素がばら撒かれたことを示す証拠となった。


(可視光の望遠鏡で見た観測領域付近の画像)

可視光の望遠鏡で見た観測領域付近の画像。黒い点は銀河(一部は我々の銀河系の星)。クリックで拡大(以下同じ)(提供:大阪大学 藤田裕准教授、以下同じ)

(X線の望遠鏡で見た観測領域付近の画像)

X線の望遠鏡で見た観測領域付近の画像。(青の四角が、すざくの観測視野。一世代前のローサット衛星による観測のため、青の四角内からのX線はとらえられていない)

(すざくによる観測の画像)

2枚目の画像に示されている青い四角内をすざくが観測した画像

この研究成果は、日本天文学会2007年秋季年会を代表する研究として発表されている。

生まれたばかりの宇宙には水素とヘリウムしか存在しなかったと考えられている。現在わたしたちの身近にある鉄や酸素、炭素などの物質(重元素)は、その後に誕生した銀河の中で、超新星が爆発することで作られたのだ。

これまでに行われた可視光観測によって、銀河内では、一斉に超新星爆発が起こっていたことが示されている。しかし、それがいつで、その後重元素がどのくらい広く宇宙空間にばら撒かれたのかは、よくわかっていなかった。

大阪大学の藤田裕准教授を中心とした研究チームは、そのなぞに迫るために、「すざく」によるX線観測を行った。

観測のターゲットとなったのは、合体の初期段階にある銀河団Abell 399とAbell 401から、500万光年ほど離れた領域。この領域は、両銀河団からじゅうぶんに離れており、可視光による観測でも、ほとんど何も存在しないことがわかっている。

「すざく」は、この領域に一様に広がったひじょうに淡いガスの放射をとらえた。これは、銀河団から500万光年も離れたところに、重元素が広がっていることを示している。

銀河の中では、超新星がいっせいに爆発する「スターバースト」という現象が起こることがある。今回の観測結果を説明するために研究チームが行った計算では、多くの銀河でスターバーストが起こったのは、100億年ほど前という結果が得られている。

137億年といわれる宇宙の歴史において、約100億年前に放出された重元素の一部は、めぐりめぐってわたしたちの身体の一部となると同時に、遠く離れた宇宙空間を今も漂っているのかもしれない。