ガス円盤と塵円盤を伴う双子の原始星を発見
【2007年10月1日 国立天文台 アストロ・トピックス(335)】
双子として生まれながら、まったく異なる「産着」をまとった星の赤ちゃんが見つかった。ペルセウス座の方向約1000光年の距離にある原始星の連星で、片方にはガスが豊富な円盤、もう片方には塵(ちり)が豊富な円盤が存在していることが明らかとなった。
アストロ・トピックスより
韓国天文宇宙科学研究院と国立天文台の研究チーム(注1) は、ペルセウス座方向にある生まれたばかりの双子の原始星において、一方の星にガスが豊富な円盤が、もう一方の星には塵が豊富な円盤があることを発見しました。双子の原始星に付随してこのような極端に異なる性質の円盤が見つかったのは初めてです。
研究チームは、米国国立電波天文台(NRAO)の超大型電波干渉計(VLA)を用いて、地球から1000光年ほど離れた散光星雲NGC 1333の中の原始星IRAS 4Aを観測しました。アンモニア分子の輝線を利用してガス成分を、熱的電波と呼ばれる連続波を使って塵成分を測定したのです。アンモニア分子の輝線の観測データからは、円盤が回転していることも見いだされました。
また、ガスと塵がどれだけ中心に集中しているか、ガスの温度と塵の温度、水メーザー(電波におけるレーザー)の存在などから、この双子の原始星は同時に誕生したこと、そしてまだ誕生して間もないことがわかりました。そして驚くべきことに、原始星に付随する円盤は、片方はガスが豊富でもう片方は塵が豊富というひじょうに異なった性質を持っていたのです。ガスと塵の存在量の比の違いは7倍にも達しています。
原始星に付随する円盤でのガスと塵の割合は、木星のようなガス惑星が誕生する確率と、地球のような固体惑星が誕生する確率に関係している可能性があります。地球のような惑星がどの程度生まれるのか、さらには生命の誕生の可能性を考える上でも重要であり、その意味からも今回の成果はたいへん興味深い発見といえるでしょう。
電波天文学の観測装置の進展により、これまで難しかった惑星の誕生の場の直接観測が可能になってきています。国立天文台などが国際協力でチリに建設中の大型電波望遠鏡ALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)では、解像度、感度の飛躍的な向上が期待され、今回発見されたような性質の異なる円盤を、さらに詳細に観測することにより、惑星誕生の謎にメスをいれることができると期待されています。さらに地球外生命の可能性に関しても、なんらかの知見が得られるかもしれません。
この観測成果は、10月1日発行の米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載されます。
(注1):Choi, Minho(チョイ・ミンホー、韓国天文宇宙科学研究院)、立松健一(たてまつ・けんいち、国立天文台)、Park, Geumsook(パク・グムスク、韓国天文宇宙科学研究院)、Kang, Miju (カン・ミジュ、韓国天文宇宙科学研究院)