最大の恒星質量ブラックホールが観測された

【2007年10月29日 Chandra Photo Album

銀河M33の近くに存在する巨大な星とブラックホールの連星系の観測で、ブラックホールの質量が太陽の約16倍であることが明らかとなった。恒星質量ブラックホールとしては、これまでに見つかっているもののうちで最大の質量だ。


(M33 X-7の想像図と可視光とX線の合成画像)

M33 X-7の想像図(右下)と、M33 X-7をとらえた可視光とX線の合成画像。クリックで拡大(提供:(イラスト)NASA/CXC/M.Weiss、X線画像)NASA/CXC/CfA/P.Plucinsky et al.; Optical: NASA/STScI/SDSU/J.Orosz et al.)

さんかく座の方向300万光年の距離にある銀河M33の近くには、ブラックホールと巨大な星から成る連星系M33 X-7が存在している。

NASAのX線観測衛星チャンドラと米国ハワイにあるジェミニ望遠鏡によるこの連星の観測から、ブラックホールの質量が太陽の約16倍あり、伴星の質量が太陽の約70倍であることが明らかとなった。

ブラックホールには、大きく分けて3つのグループがある。1つ目は、太陽数個分の質量を持つ「恒星質量ブラックホール」と呼ばれるグループで、太陽3個分以上の質量をもつ恒星が進化の最期に見せる姿と考えられている。2つ目は、太陽の1000個程度の質量を持つ「中間質量ブラックホール」と呼ばれるグループ。その形成メカニズムは、大質量星の暴走的な合体ではないかと考えられている。3つ目は、ほとんどの銀河の中心核に存在し、太陽の100万倍から数十億倍の質量を持つ「大質量ブラックホール」と呼ばれるグループだ。

連星系M33 X-7に存在するブラックホールは恒星質量ブラックホールの1つで、太陽の約16倍という質量は、今までに観測された恒星質量ブラックホールのなかでは最大だ。

M33 X-7のようすを示したイラストには、2つの大きな質量を持つ天体の間で何が起きているのかが示されている。イラスト中、右側にありオレンジ色で描かれているのが、ブラックホールを取り巻く円盤。その左側に青い色で描かれているのが伴星だ。伴星から吹く風は強力な重力に引っ張られ、ブラックホールの周辺に波紋を起こしている。また、伴星から見たブラックホールの背後では、乱流が起こっている。