われわれに身近な「月」は、稀な存在か?

【2007年11月30日 Spitzer Newsroom

太陽系に惑星が誕生して間もないころ、原始の地球に火星ほどの大きさの天体が衝突して、月が形成されたと考えられている。太陽系以外の惑星系に、同じような衝突で形成される衛星は存在するのだろうか。


(NASAの木星探査機ガリレオがとらえた地球と月の画像)

NASAの木星探査機ガリレオがとらえた地球と月。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

われわれの生活に身近な月は、その重力で潮の満ち干きを起こし、地球の生命の進化を促し、海で誕生した生物を陸上生物へと進化させたと考えられている。

地球の生命に多大な影響を与えた月の形成は、約40億年ほど前にさかのぼる。太陽が誕生してから3000万年から5000万年後、太陽系には岩石惑星が姿を現しはじめていた。そのころ、大きさが火星ほどの天体が、生まれて間もない地球に衝突し、その残骸が地球の軌道に落ち込み、破片が集まって月となったと考えられている。これは「ジャイアント・インパクト説」と呼ばれている(一方、太陽系の他の衛星は、惑星と同時に形成されたか、あるいは惑星の重力によって取り込まれたと考えられている)。

米フロリダ大学のHadya Gorlova氏らの研究チームは、同様の衝突で、たくさんの月が形成されていれるならば、多くの恒星の周辺にちりが観測されるはずであると考えた。そして、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーを使い、3000万歳ほどの年齢にある恒星400個を観測した。

結果、400個のうちたった1個の恒星に衝突を物語ると思われるちりを発見した。さらに、ちりが集まるのに要する時間と衝突の起こる年代の幅などを考慮に入れた計算から、月のような天体が形成される確率は、せいぜい5パーセントから10パーセントであるという結論を出した。

研究に参加したアリゾナ大学のGeorge Rieke氏は、「衝突が起きていても、それが最終的に「月」のような天体の形成にいたるかどうかはわかりません。そう考えれば確率はさらに低くなる可能性があります」と話している。

衛星はもっと別のプロセスで形成された可能性もある。また、この宇宙に存在する岩石惑星のほとんどに、実は地球の月のような衛星は存在しないかもしれない。しかし、現在数十億個と考えられている岩石惑星の数をもとにすれば、その5パーセントから10パーセントにあたる数億個の月が存在していることになる。