土星は、生まれたときから「リングの惑星」?

【2007年12月18日 CU-Boulder News Releases

土星の環(リング)は比較的若く、約1億年前に形成されたと言われている。しかし、NASAの探査機カッシーニの観測によれば、環の年齢は土星自身と同じ、約45億歳かもしれない。環を構成する物質が絶えず変質することで、全体としては若さを保っているように見えるというのだ。


(土星の環を構成する物質の想像図)

土星の環を構成する物質が寄せ集まっているようすの想像図。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Colorado)

現在、多くの研究者は「土星の環は新しい」と考えている。土星が形成されたのは、太陽系自体が生まれたのと同時で、約45億年前。一方、1970年代に土星を訪れたNASAの探査機ボイジャーや、1990年代から観測を始めたNASAのハッブル宇宙望遠鏡のデータからは、環の年齢はおよそ1億歳と算出された。そのころに、彗星が大きな衛星に衝突して粉々に砕いてしまい、その破片が環になった、というのが有力なシナリオである。

環は1枚の板ではなく、無数の氷や岩石の小片で構成されている。そのため環が古ければ古いほど、惑星間をただよう塵(ちり)が小片の表面に積もり、環全体が暗い色になるはずだ。土星の環は比較的明るく見えるので、1億歳という推定結果が出た。

ところが、カッシーニの観測結果がこれらの議論に一石を投じた。環が明るく見えるのは、環を構成する物質が絶えず生まれ変わっているからだというのだ。コロラド大学ボールダー校でカッシーニの紫外線分光器の主任研究員を務めるLarry Esposito氏は「この証拠は、土星の歴史が常に環とともにあったことを物語っています」と語る。

Esposito氏らは、土星の環の外寄りにあたる「F環」の中に、直径27メートルから10キロメートルの13個の「物体」が存在することを突きとめた。これらの物体は1つのかたまりではなく、星の光が透けるほどすかすかだった。どうやら、いくつかの小片が寄せ集まって形成されたようだ。土星の環には従来の推定以上に多くの岩や氷が含まれているらしい。そして、無数の小片が離合集散を繰り返すことで、小片の色は絶えず更新されているのだ、とEsposito氏は考えている。

さらにEsposito氏は、未来の土星の環は現在見える環と同じ姿ではないはずだ、と強調する。「例えば、巨大な都市は何百年も何千年も存在し続けます。しかし、新しい市民が誕生しては老いていくことで、街をゆく人々の顔は常に変わるのです」

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