板垣さんと金田さん、見失われた彗星を111年ぶりに発見

【2008年9月12日 IAUC】

9月10日(世界時、以下同様)に、山形県の板垣公一さんと北海道の金田宏さんが彗星を発見した。この彗星は1896年に出現したジャコビニ彗星(D/1896 R2)と同定されたため、彗星に名前こそ付かなかったものの、111年間観測されていなかった彗星を再発見するという快挙となった。


(門田健一氏撮影のジャコビニ彗星の画像)

確認観測でとらえたジャコビニ彗星。CCD全光度は13.1等で、南東の方向に尾が見られる。
撮影者:アストロアーツ 門田 健一 / 撮影日:2008年9月11日 1時42分(JST) 60秒露出×19枚 / 撮影機材:口径25cmF5反射+冷却CCD / ステライメージ Ver.6でメトカーフコンポジット

山形県山形市の板垣公一さんと北海道札幌市の金田宏さんは、口径21cmF5反射望遠鏡でわし座とみずがめ座の境界付近を撮像した9月10.56日のCCD画像に、13等級の新彗星を発見した。日本国内における新彗星発見は、2002年12月に発見された工藤・藤川彗星(C/2002 X5)以来、6年ぶりである。

発見時の彗星には、中央に強い集光があり、約25秒角のコマと東南東に伸びる2分角の尾があった。確認観測を行った滋賀県守山市の井狩康一さんは、彗星のコマは0.8分角、位置角120度の方向に1分角の尾、埼玉県上尾市の門田健一さんは、コマは1分角、位置角124度の方向に1.1分角の尾があるとそれぞれ報告している。

この彗星の発見直後、ドイツのM. Meyerさんは、この彗星が1896年に出現したジャコビニ彗星(D/1896 R2)と同定できることを指摘した。1897年1月以来観測されていないこの彗星は、兵庫県洲本市の中野主一さん(東亜天文学会計算課)によって、近日点通過が2008年9月9.89日と予報されていた。

Meyerさんの指摘を受けて、中野さんは今回の彗星(P/2008 R6)がD/1896 R2と同一であることを確認し、国際天文学連合へ報告した。110年以上見失われていた彗星ながら、予報軌道からの近日点通過のずれは、わずかに+0.32日、発見位置のずれは、赤経方向に- 0゚.35、赤緯方向に- 0゚.02であった。なお、この彗星は今までに17回帰しており、1962年9月に地球に0.51 AU(天文単位)まで接近し、1992年1月には木星に0.81 AUまで接近した。

板垣さん、金田さんが発見した彗星に、両氏の名前が追加されることにはならなかったが、111年間見失われていた周期彗星を再発見した功績はひじょうに大きい。板垣さんは金田さんとともに、今回の発見を「夢のような幸運」と話しており、今後も超新星、彗星探しを楽しみながら続けたいとコメントしている。

(※月刊星ナビ11月号(Observer's NAVI)では、板垣さん、金田さんによる再発見について、インタビュー記事などを掲載する予定です)

ジャコビニ彗星(P/2008 R6)の暫定軌道要素
MPEC 2008-R60による(※角度に関する要素は2000.0年分点)

近日点通過(T)2008年9月10.20628日
近日点距離(q)1.5278701 AU
離心率(e)0.5684028
近日点引数(ω)154.30508゚
昇交点黄経(Ω)179.62748゚
軌道傾斜角(i)15.31768゚
元期(Epoch)2008年9月11.0日 TT