細長い準惑星、「ハウメア」と命名
【2008年9月18日 IAU】
ラグビーボールのような形状で知られる太陽系外縁天体(136108)2003 EL61が、「ハウメア(Haumea)」と命名された。これは国際天文学連合(IAU)の承認によるもので、あわせて準惑星および冥王星型天体としての分類と、2つの衛星の名前も承認された。
変わり者の天体が準惑星の仲間入りをした。「丸い」と表現できる形状からはほど遠く、ラグビーボールをさらに細長く引き伸ばしたような天体だ。伸びた方向の長さは2,000kmと冥王星の直径に匹敵する一方で、自転軸方向の長さは500kmしかないと推定されている。2004年12月28日に米・カリフォルニア工科大学のMichael Brown氏らが海王星の外側に発見し、「2003 EL61」という仮符号が、また後に「136108」という小惑星番号がつけられていた。
惑星および準惑星の定義には次のような一文がある。
じゅうぶん大きな質量を持つので、自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し、…
一見すると2003 EL61はこの定義に当てはまらないようだが、小さくていびつな小惑星と違って、2003 EL61は冥王星の3分の1ほどの質量があり、重力が形状に強く作用している。ほかの大型天体と異なるのは、4時間で1周という猛烈な速さの自転。遠心力が働いて細長くなったのだ(24時間で1周する地球も、わずかながら赤道方向に伸びている)。
ところで、太陽系外縁天体は主に氷でできていることが知られている。それに対して、2003 EL61はほとんど岩石でできていて、表面に薄い氷の層があるらしい。もしすべて氷だったとしたら、遠心力でさらに細く引き伸ばされてしまっただろう。
のちに、2003 EL61に2つの衛星があることもわかった。そこで、Brown氏は次のような仮説を立てている。太陽系が誕生した45億年前に、2003 EL61は岩石の核と厚い氷の層を持つ、冥王星にそっくりの太陽系外縁天体として生まれたが、そこに別の太陽系外縁天体がななめに衝突した。その結果、氷の大部分がはぎ取られ、破片の一部は衛星となり、残った岩石、すなわち2003 EL61は高速で回転するようになった。
2003 EL61の共同発見者で米・エール大学のDavid Rabinowitz氏は「ハウメア(Haumea)」という名前を提案していた。ハワイ神話に登場する多産と豊穣の女神だ。神話によれば、ハウメアの子どもは彼女の体のさまざまな部分から飛び出して生まれたという。さらに、大地の女神として石を象徴する存在でもある。うってつけの名前と言えそうだ。
さらに、2つの衛星にはハウメアの子どもである女神の名前が提案された。外側にある明るい衛星はハワイ島の守護神「ヒイアカ(Hi'iaka)」、内側の暗い衛星は水の精霊「ナマカ(Namaka)」である。
IAUの小天体命名委員会および惑星系命名ワーキンググループはこれらの申請を承認し、9月17日に発表した。あわせて、ハウメアが5個目の準惑星、および4個目の冥王星型天体として分類されることが決まった。分類によって太陽系そのものに変化があるわけではないが、われわれが共有するイメージにユニークな天体が加わり、太陽系が多様で豊かであることがいっそう実感できるのではないだろうか。