赤色巨星のまわりから湧き出すちりを発見

【2009年1月16日 国立天文台

国立天文台などの研究チームが、赤色巨星のまわりから少しずつちりが沸き出していることを示す観測成果を発表した。これまで、初期宇宙の銀河では、ちりをばらまくのは超新星爆発だけだとされていたが、どうやらもっと軽い星も役割を果たしているようだ。


(スピッツァーが観測したMAG29の写真)

スピッツァーが観測したMAG29。クリックで拡大(提供:国立天文台ホームページより)

初期宇宙には、赤外線で明るく輝く銀河が多数存在する。銀河の中に豊富にあるちりが星の光を吸収し、赤外線を放射しているためと考えられている。

しかし、初期宇宙の銀河でどのようにしてちりが作られたのかはよくわかっていない。初期宇宙では、ちりの生成に必要な炭素、酸素、ケイ素、鉄などがほとんどない。これらの元素は、恒星内部の核融合反応によって生成されることがわかっている。そのため、超新星爆発の際にちりが一瞬にしてできるのではないか、一方で、超新星爆発を起こさない軽い星は鉄やケイ素などを作らないため、宇宙初期のちりをつくるのにはあまり向いていないのではないかと考えられてきた。

米・コーネル大学、国立天文台、英・マンチェスター大学などの研究者からなるチームは、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーを使った観測で、「MAG29」と呼ばれる赤色巨星のまわりに、炭素だけからなる大量のちりを発見した。赤色巨星は質量が太陽の8倍以下の恒星が年老いた姿である。その内部では炭素が合成され、その炭素をもとに少しずつちりがつくられているという。

スピッツァーが観測したMAG29は、約284,000光年の距離に位置するちょうこくしつ座楕円矮小銀河に存在する。赤色巨星の中でも、水素とヘリウム以外の元素が占める割合が少なく、太陽に比べて5%ほどしかない。また、ちょうこくしつ座楕円矮小銀河は、存在する元素の割合が宇宙が誕生したころに近く、ちりがほとんどできないと考えられてきた。

これまで、もっとも若い赤色巨星でも年齢が1億歳以上と考えられてきたが、最近の研究によれば誕生から1000万年ほどで赤色巨星になる場合もあるようだ。この年齢は、今までに見つかっているもっとも若い銀河の年齢よりも若い。どうやら、MAG29のような赤色巨星は、初期宇宙に生まれた銀河の中にも多数存在し、銀河内にちりをまき散らしていたようだ。