すばる望遠鏡がとらえた宇宙花火

【2009年7月3日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡が、有名な惑星状星雲「らせん状星雲」を観測し、星雲の内部全体に彗星のような形をした多数の塊が花火のように広がっているようすをとらえた。この星雲では、この塊の中にだけ水素分子が存在することが明らかとなった。


(すばる望遠鏡がとらえた彗星の形をした塊の画像)

すばる望遠鏡がとらえたらせん状星雲。彗星のような塊が数多く存在する。クリックで拡大(提供:すばる望遠鏡、国立天文台)

(らせん状星雲(NGC7293)の画像)

ハッブル宇宙望遠鏡による、らせん状星雲の可視光画像(白枠は上の画像の範囲)。クリックで拡大(提供:NASA, NOAO, ESA, the Hubble Helix Nebula Team, M. Meixner (STScI), and T.A. Rector (NRAO))

らせん状星雲(NGC7293)は、みずがめ座の方向約720光年の距離にある有名な惑星状星雲。寿命を迎えた恒星から放出されたガス(主に水素)が、中心に残された表面温度123,000度(太陽は約6,000度)の白色矮星が放つ強烈な紫外線を受けて輝いている。

このような環境では、ガスの大部分は陽子や電子に分解されたプラズマの状態となる。しかし、らせん状星雲にはなぜか分解されずに分子の状態を保った水素が存在することが知られていた。

国立天文台などの研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された近赤外線カメラMOIRCSで、らせん状星雲を水素分子が発する特有の光で撮影し、水素分子の分布を調べた。

すると、水素分子で形成された彗星のような塊が、星雲の中で同心円状に、まるで花火のように分布していることがわかった。中心の白色矮星からの紫外線や粒子の風を受けて、水素分子が少しずつはがされた結果、外側に伸びる彗星のような尾を形成しているらしい。

彗星のような塊は星雲全体で約4万個存在するが、それぞれの核の直径は約400天文単位(太陽を巡る地球の軌道の約200倍、冥王星の約5倍)。塊は元々はるかに小さかったが、白色矮星にあぶられた結果大きくふくれあがっているらしい。