ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、個性豊かな惑星状星雲

【2007年9月18日 HubbleSite

NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した4つの惑星状星雲の画像が公開された。惑星状星雲は太陽のような星が死を迎えた姿だが、その形や色は、環境の違いを反映して多様性に富んでいる。


(HSTが撮影した惑星状星雲)

HSTが撮影した4つの惑星状星雲。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA))

この画像は、HSTが撮影した画像から一般向けの美しいものを選び後世に残そうという「ハッブル・ヘリテージ・プロジェクト」の一環で公開された。4つの天体は、2007年2月に相次いで撮影された惑星状星雲である。

惑星状星雲は、まだ小さな望遠鏡しかなかった18世紀に観測されたとき、丸い形が惑星を連想させたことからその名がついた。しかし、実際には惑星とは無関係だ。恒星は核融合エネルギーで輝いているが、その核融合が不安定になると外層が大きく膨らみ、時には物質を大量に放出する。太陽程度の質量を持つ恒星が核融合を終えると、中心には余熱だけで輝く高密度の「白色矮星」が残る。周囲に広がったガスが白色矮星からの紫外線に刺激されて輝いているのが、惑星状星雲の正体だ。

メカニズムは同じでも、恒星が死を迎える前の状態や、白色矮星になってからの経過時間を反映して、惑星状星雲の形や色はさまざまに変化する。なお、画像は3つの波長で撮影したデータを重ね合わせた合成カラーで、赤が窒素、緑が水素、青が酸素の輝きをそれぞれ反映している。

左上のHe 2-47は、りゅうこつ座の方向6,600光年の距離にある。足が伸びているように見えることからヒトデにも例えられるが、よく見ると3つのリングが重なった構造だ。これは、中心星が死の直前に少なくとも3回、別々の方向に物質を吹き出したことを示唆している。

右上のNGC 5315(コンパス座、7,000光年)はX字型で、こちらは物質が2回放出されたことをうかがわせる。鮮やかな赤色をしていることから、おもに窒素が輝いていることがわかる。He 2-47とNGC 5315は、形成されてからの時間が比較的短い惑星状星雲だ。

左下のIC 4593(ヘルクレス座、7,900光年)は、形成後数千年が経過し大きく広がった惑星状星雲だ。依然として赤い腕状構造が認められるものの、水素や酸素の輝きがそれに勝っている。

右下のNGC 5307(ケンタウルス座、7,900光年)はらせん状の構造が特徴的である。死にゆく星がふらついていたため、ガスがさまざまな方向に放出されたのかもしれない。