すばる望遠鏡、銀河辺境部の星形成を明らかに
【2009年9月9日 すばる望遠鏡】
すばる望遠鏡による渦巻銀河NGC 6946の観測から、銀河の中心から半径6万光年以上という辺境部でも活発に星が形成されていることが明らかになった。
ハワイ観測所では、大学生対象の「すばる望遠鏡観測研究体験企画」を毎年開催している。昨年はこの企画に学生10名が参加し、はくちょう座とケフェウス座の境界にある渦巻き銀河NGC 6946の観測を行った。
NGC 6946は銀河円盤(渦巻き腕)をほぼ真上から見ることができるため、銀河内の場所による星生成活動の差異を調べるのに適している。今回の観測で得られたデータの特徴は、星生成活動の指標となる水素の電離輝線(Hα)をとらえるフィルターを用いて、今まで観測されていなかった銀河の外縁部までを広く深く観測したことにある。
学生らは、すばる主焦点カメラ(Suprime-Cam)を使って40分程の観測を実施した。観測からは良質な画像が得られ、画像の解析も学生らが行った。その結果、1413個もの電離水素領域(HII領域ともいう)が検出された。また、銀河の中心から半径6万光年以上離れた辺境部にHII領域が初めて発見された。電離水素領域とは、重い星が生まれている星形成領域のことである。なお、半径6万光年という距離は、これまでに観測された領域から、さらに2倍以上も銀河中心から離れている。
また、電波(21cm輝線)の観測から得られている中性水素の分布とHII領域の分布を比較した結果、HII領域は、局所的に中性水素密度が低くなっている部分を取り囲むようにして分布していることがわかった。これは、中性水素の局所的な密度の増減が大質量星形成を引き起こす条件の一つであることを示す観測的証拠と考えられている。
この観測結果は、これまであまり理解が進んでいなかった銀河外縁部の星形成活動のようすを示すもので、銀河外縁部の研究における基礎的観測データとして役立つと期待されている。
※この結果は2009年天文学会秋季年会で報告されます。
- 講演タイトル: 「Suprime-CamによるNGC6946外縁部の星形成の描像」
- 講演者: 梅畑豪紀、内山瑞穂、釋宏介(東京大学)、大友雄造(千葉大学)、佐久間絵理(東京理科大学)、今西昌俊、小宮山裕(国立天文台)、2008年度すばる観測研究体験企画関係者