ハッブルがとらえた、2つの尾が伸びる銀河

【2009年10月19日 ESA

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、2つの渦巻き銀河どうしの衝突でできた銀河をとらえた。2本の尾のように見えているのは、衝突前に2つの銀河にあったガスで、接近にしたがって引き伸ばされ、このような形になったと考えられている。


(HSTが2007年にとらえた銀河NGC 2623の画像)

HSTが2007年にとらえた銀河NGC 2623の画像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA and A. Evans (Stony Brook University, New York & National Radio Astronomy Observatory, Charlottesville, USA))

HSTが、かに座の方向約2億5000万光年の距離にある銀河NGC 2623(別称:Arp 243)をとらえた画像が公開された。

NGC 2623は一見1つの銀河に見えるが、実は天の川銀河のような渦巻き銀河どうしが衝突した後の姿である。2つの銀河にあった大量のガスが、接近するにしたがって互いに相手の銀河の中心方向に向かって引き伸ばされて、このような姿になったと考えられている。

銀河どうしの衝突では、ガスなど大量の物質が移動し、星形成が引き起こされる。中心から伸びる長い2本の尾のうち下方の尾には、その証拠である若い星団が数多く観測されている。衝突は後期の段階にあると考えられており、もともと2つあった銀河の核も、今は1つとなっている。

NGC 2623を含め、2つの銀河が合体してできた銀河には、中心に超巨大ブラックホールが観測されることがある。銀河の物質はブラックホールに向かって落ち込み、周囲に降着円盤を形成する。激しい活動により円盤は高温となり、そこから放出されるエネルギーが広範囲の電磁スペクトルとして観測される。このように、銀河中心に存在するブラックホールの活動によって高いエネルギーを活発に出している天体を活動銀河核と呼ぶ。

HSTによるNGC 2623の観測は、「GOALS」と呼ばれる赤外線で輝く銀河(高光度赤外線銀河:LIRG)を調べるサーベイの一環で行われた。同サーベイでは、そのほかに、NASAの赤外線観測衛星スピッツァーやX線天文衛星チャンドラ、紫外線天文衛星GALEXを使い、さまざまな波長による観測が実施されている。NGC 2623は活動銀河核の形成途中にあるため、赤外線やX線による観測が行われれば、可視光では見ることのできない活動銀河核や銀河中心における星形成に関するデータが得られると考えられている。