最遠銀河団の記録が塗り替えられた
【2009年10月28日 CHANDRA Press Room】
わたしたちから約102億光年の距離に、これまで知られている中でもっとも遠い銀河団JKCS041が発見された。JKCS041の距離は銀河団が存在する限界に近いと考えられており、さらに詳しい研究で宇宙の進化に関する重要な情報が得られると期待されている。
NASAのX線天文衛星チャンドラのウェブサイトで、わたしたちから約102億光年のかなたに存在する、これまで見つかった中でもっとも遠い銀河団JKCS041の画像が公開された。
JKCS041以前の最遠記録は、2006年にESAのX線天文衛星XMM-Newtonによって92億光年の距離に発見されたXMMXCS J2215.9-1738だ。その記録は、さらに約10億光年ほど遠いJKCS041によって塗り替えられることとなった。
JKCS041は、イギリスの赤外線望遠鏡UKIRTによって2006年に初めて検出された。その後、他の望遠鏡による観測で距離が決定されていたが、この天体が果たして銀河団なのかが疑問視されていた。
その疑問に答えを出すために、チャンドラによる観測が行われ、銀河団を包むように広がる領域(画像中 青)がとらえられた。これは、銀河団内に分布する数千万度の高温ガスから放たれるX線であり、JKCS041が銀河団である決定的な証拠となった。
銀河団は、重力でまとまった天体としては、宇宙でもっとも大きい。成長に必要な時間を考えると、JKCS041は、銀河団が形成されうるもっとも早い時期のあたりに存在する。そのため、質量や温度、組成などを調べると、この宇宙がどのように進化してきたのかを知る手かがリが得られると考えられている。英・ブリストル大学のBen Maughan氏は、この銀河団の発見について、「最古のティラノサウルスの化石を発見するようなもので、実にエキサイティングです」と話している。