すばる望遠鏡、最遠の銀河団を発見
【2005年2月18日 国立天文台 アストロ・トピックス(84)】
元国立天文台の大内正己(おおうちまさみ)研究員(現:米宇宙望遠鏡科学研究所・ハッブル特別研究員)を中心とする東京大学、国立天文台などのグループは、すばる望遠鏡によって127億年前の宇宙に、生まれて間もない銀河団を発見しました。
銀河団とは、数十個の銀河が狭い範囲に集まった集団です。しかし、このような巨大な集団がいつ頃、どのように生まれてきたのかは十分にわかっているわけではありません。そこで大内研究員らは、くじら座の方角、SXDS(すばる/XMMニュートン・ディープサーベイ領域)の領域にすばる望遠鏡を向け、主焦点広視野カメラ(Suprime-Cam)を用いて、大昔の銀河を捜索しました。その結果、差し渡し5億光年、奥行き1億光年におよぶ広い範囲に、515個の銀河を見つけました。これらの銀河の分布を示した「宇宙地図」は、いわば人類史上、もっとも遠くの世界を表した地図であると同時に、最古の宇宙を示した地図ともいえます。
さらに研究グループは、この「宇宙地図」の南側に、偶然では説明できないくらい多数の銀河が集まっているのを見つけました。その部分にある銀河に、ふたたびすばる望遠鏡を向け、微光天体分光撮像装置(FOCAS)で詳細に観測した結果、直径300万光年の狭い範囲に6個の銀河が群がる、いわば“銀河団の祖先”を発見しました。これは、いままで知られている中では最遠の銀河団です。この銀河団は、現在の銀河団と比べると、構成する銀河の個数が少ない上、全体の質量も2桁小さくなっています。さらに、この銀河団の中では活発に星が作られていることが分かりました。そのため、これは生まれたばかりの銀河団であり、今日見られるような巨大な銀河団へと成長する最初の姿であると考えられます。すばる望遠鏡によって、銀河団の誕生直後の姿を世界で初めてとらえた快挙といえるでしょう。
この結果は2月26日から米国ハワイで開催される国際研究会"The Future of Cosmology with Clusters of Galaxies"でも発表される予定です。