ちりに包まれた若い双子の褐色矮星
【2009年12月1日 Spitzer Newsroom】
厚いちりの雲の中に潜む双子の褐色矮星が発見された。両天体は、これまでに観測された褐色矮星の中でもっとも若い。今後研究が進めば、いまだによくわかっていない褐色矮星の形成プロセスの謎を解く鍵になるかもしれない。
褐色矮星とは、温度と質量を基準にすると、惑星と恒星の中間の天体である。恒星に比べると質量が小さく、温度が低い。一方、惑星と比べると質量が大きく、たいてい温度も高い。
1995年に第1号が発見されて以来、数百個の褐色矮星が見つかっているが、だれもその進化の初期段階を見たことがなく、形成過程が果たして恒星と惑星のどちらに似ているのか、答えはまだ出ていない。
星のなりそこないと呼ばれる褐色矮星は、水素を燃やして一人前の星として輝くには質量が足りないので温度が低く、暗いので検出が難しい。さらに、若い褐色矮星の進化は速いので、誕生から間もない姿をとらえるのは困難だ。
スペイン天体物理センターのDavid Barrado氏らの研究チームは、生まれたてで、まだちりの雲に包まれている褐色矮星は、強い赤外線を放射するはずであり、その特徴を観測に利用すれば検出が容易であると考えた。
この考えに基づいて、同チームはスピッツァーの長波長赤外線カメラを使い、若い褐色矮星を包むちりの雲を観測した。スピッツァーの赤外線の目はちりを見通すことができるからである。続いて、スペインのカラール・アルト天文台が近赤外線でとらえた画像から、ちりの雲の中に2つの褐色矮星が発見された。さらに、カリフォルニア工科大学サブミリ波望遠鏡の観測データとスピッツァーの観測データを合わせることで、2つの天体の放射エネルギーの分布が得られた。
その結果、さまざまな波長における明るさの変化が、ひじょうに若い低質量星のものと一致していることが明らかとなり、褐色矮星は低質量の恒星と同じようなプロセスで形成されるという理論が支持されることとなった。
今回発見された天体が、原始褐色矮星と呼べるような段階にあるかどうかについては、今後の研究にゆだねられているものの、Barrado氏は、これら2つが原始褐色矮星の最有力候補であり、褐色矮星の誕生プロセスの謎を解く鍵となる可能性があると話している。