ガンマ線の目で「マイクロクエーサー」を見る
【2009年12月9日 NASA】
NASAのガンマ線天文衛星フェルミが、強いX線源として知られる連星系「はくちょう座X-3」を観測し、高エネルギーのガンマ線を検出した。はくちょう座X-3の伴星の正体はブラックホールまたは中性子星がガスを吸い込んでエネルギーを生み出す、「マイクロクエーサー」ともよばれる天体だ。
「はくちょう座X-3」は、主星が大質量の恒星、伴星がブラックホールまたは中性子星の連星で、マイクロクエーサーの1つである。マイクロクエーサーは、巨大ブラックホールの活動によると思われる電波ジェットと、広範囲の波長にわたる強いエネルギーを放出し、急激な明るさの変化を見せるという特徴を持つ天体だ。
はくちょう座X-3は、強いX線源として1996年に発見された当時から、ガンマ線も放射しているのではないかと考えられてきた。発見から10年以上経過した今になり、ついにガンマ線天文衛星フェルミがガンマ線の放射を検出した。
はくちょう座X-3の主星は、表面温度が10万度もある大質量星だ。この星からは物質が恒星風となって宇宙空間へ放出されている。そのまわりを、主星から流出する物質を引き寄せて円盤を形成した伴星が、4.8時間の周期で回っている。
フェルミによる観測で、はくちょう座X-3から放射されるガンマ線の強さが伴星の公転に伴って変化していることがわかった。伴星が主星の奥にあるときにガンマ線が明るくなったのだ。
このガンマ線は、伴星の円盤面の上下に発生した電子が恒星からの紫外線の光子に高速でぶつかることで発生するものと考えられるが、伴星が地球から見て公転軌道上の向こう側に来たときに特に明るくなる理由について、仏・グルノーブル天体物理研究所のGuillaume Dubus氏は「円盤からの電子と恒星からの紫外線が正面衝突して発生した強力なガンマ線が地球に届くため」と説明している。
伴星の高密度天体に引き寄せられたガスの一部が、細いジェットとなって光速の半分以上のスピードで円盤の両軸方向に放出されているが、そのしくみについてはまだよくわかっていない。