超新星残骸の周りに広がる新鮮なちり
【2010年4月5日 JPL】
NASAのX線天文衛星チャンドラと赤外線天文衛星スピッツァーが、や座の方向約2万光年の距離にある超新星残骸を観測し、衝撃波によって破壊される前の新鮮なちりをとらえた。
超新星爆発は、新しい星や星団を生み出すための材料をばらまいたり、衝撃波によって周囲のガスを圧縮し新しい星を誕生させたりする。しかし、爆発でつくられるちりの量やその性質などはよくわかっていない。
X線天文衛星チャンドラと赤外線天文衛星スピッツァーは、超新星爆発でつくられたちりを調べる目的で、や座の方向約2万光年にある超新星残骸G54.1+0.3を観測した。
両衛星の観測データを合わせた画像には、超新星爆発のあとに残された、高速で自転する高密度の星「中性子星(パルサー)」(擬似カラー:白)がとらえられている。
パルサーは強い磁場を持つため、周囲の粒子を加速させる。加速された粒子の流れ(パルサー風)(擬似カラー:青)は、周囲に広がりながら、爆発で放出されたちりを輝かせる。パルサー風を取り囲んでいるのは(擬似カラー:赤)、周囲のガスやちりが凝縮されてできた構造である。
通常、凝縮したちりは冷たすぎて、赤外線も放射しない。ちりは、爆発の衝撃波によって暖められることで熱を放射するようになる。しかし、衝撃波の熱は、多くの小さなちりの粒子を破壊してしまうと考えられている。G54.1+0.3では、そのような破壊が起こる前の新鮮な粒子を観測することができているのである。
その理由は、G54.1+0.3があるめずらしい環境で起きた超新星爆発だからだ。実は、超新星爆発を起こした星は、画像にとらえられている星と同じ星団に属している。そのため、ちりは広がりながら、星団の星によって暖められている。画像には、星のすぐ近くで高温になっているちり(擬似カラー:黄)もとらえられている。