金星に最近の火山活動の証拠を発見
【2010年4月16日 ESA/DLR/NASA】
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の金星探査機ビーナス・エクスプレスによる観測で、過去250万年前から数百年前まで、金星で火山噴火が起こっていたことを示す証拠が得られた。金星では地球と同様の火山活動が最近まで起こっていたのかもしれない。
金星探査機ビーナス・エクスプレスは、2006年4月11日に金星に到着した。以降、金星の上空約300〜66,000kmという幅広い高度から厚い雲の下にある地形を調べ、赤外線放射の変化などに関するデータを集めている。
その観測データの分析から、過去250万年前から数百年前までに起こった火山噴火によるものと思われる溶岩が発見された。これにより、金星は今も地質学的に活動していて、火山噴火さえ起こる可能性も示された。分析には、ビーナス・エクスプレスの観測データ以外に、探査機マゼランが1990年から1994年にかけて集めたデータも利用された。
研究者はまず3つの火山地帯の周囲の地形について、構造の違いを比較した。続いて赤外線放射のようすを調べたところ、そのなかに比較的若い溶岩が含まれていることがわかった。1枚目の画像は金星のIdunn火山のもので、高さ約2.5kmの頂上を中心にもっとも温度が高くなっていることがわかる。地形データに赤外線放射のデータを重ね合わせると、コンピュータによる予測より2度から3度温度の高い領域が明らかとなった。その理由は、溶岩によって鉱物の組成が変化したためだという。
このような温度の高い地点は全部で9か所あり、その地下にはマグマが溜っていて、今も活動している可能性が高いとみられている。
今回の発見について、NASAのジェット推進研究所の研究者であるSue Smrekar氏は「これまで、金星の地質学的な歴史は、なぞに包まれていました。過去に行われた探査で、火山活動が示されていましたが、それがどれくらい前に起こったのかはわかっていませんでした。私たちはやっと(地質学的な時間スケールで)最近噴火があったことを強くを示す証拠を見つけたのです」と話している。
金星で今でも火山活動が続いていることが明らかになれば、金星は地球に続いて、太陽系内で火山が活動する2つ目の惑星となる。
金星と地球は、大きさや質量、密度や体積が似ているため、兄弟惑星と呼ばれている。しかし、金星では暴走的な温室効果が起こっている。さらにその大気組成は主に二酸化炭素で、表面の温度は鉛を溶かすほど高温で、気圧も地球の90倍もある。
いつどのようなプロセスを経たために、このような違いが生じたのだろうか。ビーナス・エクスプレスに搭載されているVIRTIS(紫外・可視光・近赤外分光計)チームのメンバーで、ドイツ航空宇宙センター(DLR)のJörn Helbert氏は、「金星を知ることで、地球がなぜ特別な惑星なのかを知ることができるでしょう」と話している。
なお、研究者は、金星の表面にクレーターが1000個ほどしかなく、比較的なだらかな理由として、火山活動を挙げている。しかし、ビーナス・エクスプレスの観測からは、金星では小さな噴火がゆるやかに連続して起こったことが示されており、惑星全体が溶岩で覆いつくされるような大規模な火山活動とは相反したものとなっている。