2009年に木星に衝突したのは小惑星だった
【2010年6月8日 HubbleSite】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡(HST)による観測から、2009年7月に木星に衝突した天体は幅500mほどの小惑星であったことが明らかになった。
2009年7月19日、木星に天体が衝突し、木星の表面に太平洋と同程度のサイズの衝突痕が残された。衝突でできた模様はまずアマチュア天文家の目にとまり、すぐにHSTをはじめとする世界中の天文台が観測を行った。
木星では、過去にも似たような現象が観測されている。1994年7月にシューメーカー・レビー彗星の破片20個ほどが木星の大気に突入したのである。HSTはその際にも木星の表面に現れた衝突痕を観測している。HSTが1994年と2009年にとらえた両衝突痕の画像の比較から、2009年に木星に衝突した天体は、幅500mほどの小惑星だったことが示された。
衝突痕の研究を行ったのは、米・宇宙科学研究所(SSI)のHeidi Hammel氏らの研究チームである。同研究チームは2009年にHSTの広視野/惑星カメラ3とACSカメラを使って衝突痕の画像を撮影し分析を行った。その結果、1994年の衝突と2009年のものでは、いくつかの違いが見つかった。
紫外線画像では、1994年の衝突痕の周囲にはっきりとハローが見られたが、2009年のものにはなかった。1994年の衝突では彗星の破片が衝突して細かなちりとなり、それが周りに飛び散ってハローができ、木星の雲と衝突してばらばらになった破片との境目をはっきりと区別できたが、2009年のものにはハローが見られず、雲と破片の境目がすぐに消えてしまったのだ。これは、2009年に衝突した天体は軽い粒子をあまり含まない固体、つまり小惑星であったことを示している。
また、衝突痕が細長い形をしていることも、1994年の衝突とは異なる。これは、2009年に衝突した天体がシューメーカー・レビー彗星より浅い角度で木星に突入したことを示している。2009年の天体はシューメーカー・レビー彗星とは異なる方向からやってきたこともわかっていて、軌道の分析から、ヒルダ群に属する小惑星であるとみられている。ヒルダ群小惑星とは、太陽から約4.0天文単位(1天文単位は地球と太陽との平均距離で1億5000万km)の距離に集まる1100個以上の小惑星のグループである。
これまで、木星で小天体の衝突が起きる割合は数百年から数千年に1回程度と予測されてきた。しかし、衝突はもっと頻繁に起きる可能性があるようだ。太陽系という場所は、わたしたちの思っている以上に荒々しい場所なのかもしれない。