ケレスほどの大きさの天体をばらばらにした白色矮星
【2010年6月29日 Gemini Observatory/Smithsonian Institution】
これまでに知られている中で、表面の重元素量がもっとも多い白色矮星が発見された。この種の天体の表面重力は地球の10万倍以上もあるため、重い物質は星の中心に落ち込むはずである。どうやら検出された物質は、白色矮星の潮汐力でばらばらになった、ケレスほどの大きさをもった岩石質の天体の破片が降り積もったもののようだ。
白色矮星は、本質的にはすでに死んだ星である。中心核における核融合反応を終えて、あとは、中心の核に残った熱を放射しながらゆっくりと冷えていく。
この種の天体はとても密度が高く、地球大の球体の中に太陽の半分ほどの質量がおさまっていて、表面重力は地球の10万倍以上にもなる。そのため、重い物質は急速に星の中心に向かって落ち込む。一方で軽い物質は表面に残りやすく、ほとんどの白色矮星の表面には、ほぼ純粋な水素とヘリウムが見られる。
そのため、白色矮星の外層にカルシウムやマグネシウム、鉄などの重元素が検出される場合、それらの起源は、白色矮星のまわりを回っていた小惑星や準惑星などの残骸が降り積もったものと考えられている。つまり、残骸を調べることで、崩壊する前の天体の情報が得られるのである。
カナダ・モントリオール大学のPatrick Dufour氏が率いるカナダと米国の共同研究チームは、スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)のデータから数千個もの白色矮星を調べ、表面の物質の組成が通常と異なるものを探し出した。その結果、これまでに知られている中で、重い元素を表面にもっとも多く含む「SDSS J073842.56+183509.6」を発見した。この白色矮星は、ふたご座の方向約440光年の距離にある。
研究チームでは、ジェミニ北望遠鏡と米・スチュワート天文台の6.5m望遠鏡MMTを使って詳しい観測を行った。すると、ケイ素やマグネシウム、カルシウムや鉄など、地球のような岩石質の天体に豊富に存在する物質の存在が強く示された。また、ジェミニ北望遠鏡に搭載されている近赤外線撮像器(NIRI)による測光観測では、星の周囲に降着円盤が検出された。
この観測結果は、白色矮星の近くに存在していた岩石質の天体が白色矮星の潮汐力によってばらばらになって、その破片の一部が周囲を取り巻く円盤となり、その他の破片は白色矮星の表面に降り注いだことを示していると考えられている。
研究チームはさらに、白色矮星の構造と大気に関するシミュレーションを行い 、この天体の表面に存在する物質の総量が4.3×1017tと求められた。その量は、太陽系の小惑星帯でもっとも大きな天体である準惑星ケレスの質量(9.4×1017t)の半分ほどにあたる。
残念ながら現時点では円盤の質量を決定できていないが、光球に存在している物質と同じ程度と考えられている。さらに大量の物質がすでに内部に沈んでしまったことを考慮に入れて、観測された重い元素の量を元に計算すると、白色矮星の潮汐力で崩壊した天体は、少なくともケレスほどの大きさだったと推測される。