「きぼう」の全天X線監視装置MAXI、新種のブラックホールを明らかに
【2010年9月24日 理化学研究所】
国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に設置されている「全天X線監視装置MAXI」を使った観測によって、昨年10月にいて座に出現したX線新星が新種のブラックホール新星であることが明らかとなった。
私たちの天の川銀河には、太陽の3倍から数十倍の質量をもったブラックホールが数多く存在している。X線はブラックホールに吸い込まれる直前に数億〜数十億度に加熱された高温の物質から放出されるため、X線観測はブラックホール近傍の情報を引き出す重要な研究手段となる。
ブラックホールそのものを単独で観測することは困難である。しかし、普通の恒星とペアになったブラックホールの場合、星からのガスが流入し始めると電波からX線までの広い波長で爆発的に明るく輝く。このアウトバーストと呼ばれる爆発現象を通じてブラックホールを観測するのだ。
「全天X線監視装置MAXI」は、2009年10月23日にいて座に出現したX線新星「XTE J1752-223」を観測し、この天体が新種のブラックホール新星であることを明らかにした。
X線新星とは、何もない天域で突如ある天体がX線で輝き始める現象で、MAXIの観測ターゲットの1つだ。その正体は、太陽の10倍程度の質量のブラックホールと太陽よりやや小さい程度の恒星の連星系だ。これまでに発見されている恒星質量ブラックホールの9割が、X線新星として発見されたものである。
MAXIは、XTE J1752-223の出現から8か月にわたってほぼ連続的にデータを取得した。そのデータの詳しい解析の結果から、この星がブラックホールを伴っており、そのX線の強さがゆっくりと増加していることがわかった。
これまで知られているブラックホールでは、伴星からの急激なガス流入のため10日以内に明るさがピークに達していたが、XTE J1752-223は3か月もかかってピークに達した。しかも、XTE J1752-223の明るくなる過程は単調ではなく、2度ほど明るさが変化しない状態にしばらく留まった。このような階段状の光度変化は従来の理論では説明がつかないことから、新種のブラックホール新星であることが判明した。