老いた巨星をとりまく円盤は小型の伴星が原因か
【2011年2月1日 ESO/MPIfR】
超巨星をとりまく円盤内部の物質の回転運動が、ESOのVLT干渉計により初めて詳細にとらえられた。老いた星には珍しい円盤の起源がまた一つ明らかになりそうだ。
とも座の4等星HD 62623は、一生の終わりをむかえつつある星としては珍しく、ガスとちりの円盤を持つ超巨星だ。通常、老いた星は周りの物質を吹き飛ばしてしまい若い星に見られるような円盤が形成されることはないと考えられるため、この円盤の起源は謎とされてきた。
仏・コート・ダジュール天文台のFlorentin Millour氏らのチームは、南米チリ・パラナル天文台の大型望遠鏡(VLT)干渉計と合成装置AMBERを使って、この円盤内部の物質が運動する様子を詳細にとらえることに初めて成功した。
その結果、円盤内の物質が恒星の周りを公転していることがわかった。また驚いたことに、円盤内の物質が吹き飛ばされているような動きも見られなかった。
この円盤が形成された要因として最も可能性が高いのは、HD 62623が太陽程度の質量の小さな伴星を持っているということだ。今回の観測で見つかった、恒星と円盤の間のすき間も、この伴星の存在によるものと考えられる。
AMBERは、VLTの複数の望遠鏡からの観測データを合成することで、口径130m相当の望遠鏡として機能させる装置だ。これにより、ハッブル望遠鏡の50倍もの解像度を得ることができる。今回の観測は、AMBERの高い解像度と、1つの天体の複数箇所のスペクトルを得る機能を初めて組み合わせることにより実現した。