宇宙最初の星は集団で形成された
【2011年2月10日 McDonald Observatory】
これまで、宇宙初期の原始星は巨大なものが個々に誕生するとされてきたが、小さな星がグループで形成されるという新しいシミュレーション結果が発表された。
137億年前に宇宙が誕生して最初にできた星々は、巨大なものが1個ずつ形成されたと考えられてきた。だが、そういったものはむしろ例外的だとするシミュレーション結果が、独・ハイデルベルク大学のPaul Clark氏と米・テキサス大学オースティン校のVolker Bromm氏らの研究チームから発表された。
チームは、宇宙初期の星形成の様子をこれまでシミュレーションされていなかった段階までスーパーコンピュータで再現した。すると、ほとんどの原始星(注1)は太陽〜地球の間ほどの狭い領域に4〜5個の小さな星が密集した状態でできたという。
誕生したばかりの宇宙は、水素やヘリウムの小さなガスの塊がところどころにあるだけでほとんど何もない場所だったが、やがて重力で集まったこれらの塊がガス雲になり、太陽質量の100分の1程度の原始星に成長したと考えられている。
原始星は残りのガスを集め、それが星の周囲のちりやガスの円盤となる。従来のシミュレーションでは、この円盤は分裂することなく中の物質は順調に原始星の重力に引っ張られつづけ、太陽質量の30〜300倍の巨大な星が形成された(注2)。連星系ができる可能性はあったとしても、例外的なこととされてきたのである。
ほとんどのシミュレーションは円盤が形成された時点で終了していたが、今回シミュレーション時間を伸ばしたところ、円盤は実はちぎれやすいことがわかった。「円盤が重く巨大になりすぎると不安定になって壊れてしまい、そこから他の原始星が作られます。最終的に大質量の二重星になったものが今、ガンマ線バーストとして観測されるかもしれませんよ」(Bromm氏)。
いくつかの原始星はお互いの衝突でグループからはじき飛ばされた可能性もある。そうだとすれば、大質量から小型のものまで様々な大きさの星ができあがったと推測され、質量の小さいものは宇宙初期に誕生して今なお輝き続けているかもしれない(注3)。
この研究は宇宙初期の星形成の新しい見地を示したが、まだ完全ではない。研究チームでは今後、物質が円盤に集積し終えるのにかかるさらに長期間のシミュレーションを目指しているということだ。
注1:「原始星」 ガスやちりなどの雲が重力収縮してできた、生まれたばかりの恒星のこと。これに対して「成人」の段階のものを「主系列星」という。
注2:「宇宙初期の大質量星形成」 宇宙最初の星々の材料となるガスには炭素や酸素などが含まれていなかったため、ガスが冷えて崩壊することなく巨大に成長していったと考えられてきた。
注3:「質量による星の寿命」 質量の大きい星ほど寿命が短い。