星の形成と衝撃波の関連をまた1つ発見

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【2011年4月18日 ヨーロッパ宇宙機関

星が新しく誕生している領域に見られる、衝撃波によってできたフィラメントと呼ばれる構造が、全て同じ厚みを持っていることが発見された。これは星形成と衝撃波の関係の理論に大きな制約を与えると考えられる。


IC 5146に見えるフィラメント

IC 5146に見えるフィラメント。クリックで拡大(提供:ESA/Herschel/SPIRE/PACS/D. Arzoumanian (CEA Saclay) for the "Gould Belt survey" Key Programme Consortium)

星間分子雲と呼ばれる領域は星の形成が活発な場所としても知られている。超新星爆発などによって引き起こされた衝撃波が星間分子雲にぶつかると、その波に押される形で波面に密度の濃い領域ができ、そこから星が生まれることがあると知られている。

しかしこれまでの研究では、その衝撃波の前面にある長さ10光年にもわたる密度の濃いフィラメント状(糸状)領域がどのくらいの厚みを持って存在しているのかはわかっていなかった。

今回、ヨーロッパ宇宙機関のハーシェル宇宙望遠鏡で3つの星間分子雲を観測し、衝撃波でできたと思われるフィラメント構造の厚みを測定したところ、その厚みが全て同じくらいであることがわかった。その厚みは約0.3光年、地球から太陽までの距離の約2万倍であった。どれも厚みが同じくらいということは、何らかの共通したメカニズムでフィラメントが形成されたと考えるのが妥当である。

コンピュータシミュレーションで検証した結果、このフィラメントは超新星爆発などの爆発現象によって生じた衝撃波が分子雲の中をゆっくり通っていくうちに徐々にエネルギーを奪われ、消えてしまった後に残されたものだろうと結論づけられた。

星間分子雲は摂氏-260度という非常に冷たい領域であることがわかっている。音速で伝わる衝撃波の速度は温度によって変化するが、星間分子雲の中を通る衝撃波は秒速0.2kmで、地球の大気中の平均的な音速(秒速0.34km)よりも遅い。このゆっくりとした衝撃波がフィラメントを構成する正体だと考えられる。

この発見は間接的ではあるが、恒星間の乱流とフィラメントの間に何らかの相互作用が働いていることを強く示唆しており、星形成の理論に強い制約を与えることが考えられる。