かに星雲からガンマ線アウトバーストを検出、しかしX線は無反応
【2011年5月13日 NASA】
NASAのガンマ線天文衛星「フェルミ」が、かに星雲からガンマ線のアウトバーストを検出した。すぐにX線観測衛星「チャンドラ」も観測を始めたが、このアウトバーストの影響と思われるような結果は取得されなかった。なぜガンマ線で検出されてX線で検出されなかったのか、その理由はよくわかっていない。
かに星雲はおうし座の方向約6500光年離れたところにあり、1054年に中国で記録された超新星爆発の残骸であることが知られている。中心には1秒間に30回転する中性子星、パルサーが存在しており、そこからパルス状の高エネルギーの光を出している。
このパルス状の光を除けば、かに星雲からは一定の強度の光が出続けていると考えられてきたが、2011年1月に長期間にわたって変化するX線の存在が発見され、かに星雲からの高エネルギーの光に注目が集まっていた。
2011年4月、通常時に見られるガンマ線の30倍、2009年に見られたガンマ線のアウトバーストの5倍もの強度をもつアウトバーストが発生し、数日間それが持続しているのをNASAのガンマ線天文衛星「フェルミ」が発見した。
このようなアウトバーストは中性子星の磁場の構造が変化することで起きると考えられる。ガンマ線で何か異常なことが起きるとX線でも変化が現れることが期待されるため、X線観測衛星「チャンドラ」を運用するチームに協力を要請し、X線でも測定を行った。しかし、チャンドラから得られたデータではパルサーの周りの円盤にこれといった変化は現れなかった。
なぜガンマ線で変化が検出されて、X線では何も検出されなかったのか、その理由はよくわかっていないが、X線で何も検出されなかったこと自体が手がかりとなるかもしれない。
つまり、チャンドラで検出できるような低いエネルギーの光が放射されないようなメカニズムでこのガンマ線が放射されている可能性や、チャンドラでは十分に見分けられないような、パルサーにごく近い領域で何かが起きている可能性が考えられる。今回のアウトバーストの規模を考えると、おそらく太陽系と同じくらいの大きさを持った領域からガンマ線が発生しているだろうと考えられている。