明治東京の時を刻んだレプソルド子午儀が重要文化財に
【2011年6月20日 国立天文台】
1880年にドイツで製作された国立天文台所蔵の「レプソルド子午儀」が国の重要文化財に指定された。明治時代には旧江戸城の正午の号砲の時刻を求めたという、日本の天文学史上由緒ある観測装置を、東京・三鷹キャンパスの資料館で常時見学することができる。
国立天文台の東京・三鷹キャンパスでは国の登録有形文化財(建造物)として、すでに太陽塔望遠鏡(アインシュタイン塔)、大赤道儀室、第一赤道儀が登録されているが、今回「レプソルド子午儀」が同天文台としては初めて国の重要文化財に指定された。
子午儀とは、天体が子午線上を通過する時刻を精密に観測することによってその地の経度を決定する、あるいは時刻を決める観測に使われるものだ。
レプソルド子午儀は、1880年(明治13年)にドイツのA. Repsold & Söhne社が製作し、翌年日本政府の海軍省海軍観象台が購入したものだ。1888年に東京大学天象台、海軍観象台、内務省地理局の3者が統合されて東京大学東京天文台(現・国立天文台)が発足した際、東京天文台に移管された。
当時は主に時刻の決定に使用され、この子午儀の観測から求められた時刻によって旧江戸城天守閣の跡地で正午の号砲が撃たれていた。現在でも、レプソルド子午儀があった麻布飯倉(東京都港区)が日本の天文経緯度の原点となっている。
1923年の関東大震災を免れた子午儀は、移転が進められていた東京天文台とともに1925年に東京・三鷹村に移され、1960年ごろまで惑星や恒星の赤経決定に使用された。
現在、国立天文台・三鷹キャンパスの常時公開コースにある「子午儀資料館」において展示されており、公開時間帯に誰でも見学することができる。
7月9日(土)午後には、レプソルド子午儀の重要文化財指定を記念して公開講演会「国立天文台の文化財―日本の天文学の歴史を探る―」が開催される。すでに申込受付は終了しているが、インターネット中継で視聴することができる(詳細は〈参照〉のリンク先へ)。