星やガスを奪う大マゼラン雲
【2011年6月29日 ScienceNOW】
天の川銀河の伴銀河として知られる大マゼラン雲は、同じく伴銀河の小マゼラン雲から星やガスを奪い取っているらしいことがわかった。大マゼラン雲に大きな星形成領域があるのは、これが原因かもしれない。
大小のマゼラン雲は南半球では肉眼でも見える天体で、有史以前から存在が知られていた。その正体は天の川銀河のそばに位置している小さな銀河で、大マゼラン雲は地球から16万光年、小マゼラン雲は20万光年ほど離れており、大マゼラン雲と小マゼラン雲の間は7万5000光年ほどの距離がある。
今回、Knut Olsenさんらが大マゼラン雲に存在する恒星を調べたところ、そのほとんどは低温だが明るく、大きく膨らんでいる赤色巨星であったが、5%ほど奇妙な速度を持つ恒星が発見された。
この恒星たちは大マゼラン雲の方向にあるものの、銀河の中心を反対向きに回ったり、54度も傾いた軌道を取って回ったりしていることがわかった。またこれらの恒星の金属量について調べてみたところ、鉄の存在量は大マゼラン雲の恒星ではなく、小マゼラン雲の恒星とよく似ていることがわかった。
大マゼラン雲と小マゼラン雲は互いの周りを楕円軌道で回る連銀河だと考えられており、互いに接近するたびに大マゼラン雲が星やガスを小マゼラン雲から奪い取っている可能性がある。
もし星だけでなく、ガスも一緒に奪い取っているとしたら、天の川銀河よりも小さい大マゼラン雲に局部銀河群(天の川銀河を含む銀河群)の中で最も活発な星形成領域が存在することが説明できるかもしれない。奪い取ったガスがこの星形成の激しい領域、タランチュラ星雲のところに流れ込むことで星の材料が供給され、大きくなっているのかもしれない。