ハッブルの次、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の現状
【2011年7月12日 NASA/米国上院歳出委員会】
様々な画像と科学的な成果を残してきたハッブル宇宙望遠鏡(HST)は2014年に退役することが決まっている。ハッブルの後継機として計画されているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の現状について紹介しよう。
1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は口径2.4mの鏡を用い、可視光だけでなく紫外線や近赤外線といった幅広い波長での観測が可能だ。スペースシャトルミッションとして行われた、宇宙飛行士による幾度かの修理を経て、打ち上げから20年以上が経った今なお活躍しているが、2014年に運用を終了する予定となっている。
このHSTの後継機となるのは、NASAの2代目長官にちなんで名付けられた「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」で、口径は6.5mと巨大化し、赤外線に特化したものになる予定である。使える波長領域はハッブルとは違っても、ビッグバン後の宇宙の進化から太陽系の形成まで、幅広いテーマで用いられる予定だ。
JWSTは4種類の鏡で構成されている。主鏡は六角形の鏡を18枚組み合わせて1枚の大きな鏡にする予定で、2011年6月末に鏡の研磨が完了した。研磨後は星の光をよく反射するように表面を金でコーティングすることになっている。
JWSTは微弱な赤外線を捉えるために宇宙空間でマイナス240℃まで冷却して運用される。また、150万kmかなたのL2点(注)軌道に載せられるため、HSTのように人の手による修理が行えない。
当初2011年打ち上げの予定で開発が進められてきたが、様々な理由により、現在は2018年の打ち上げを目指して開発が進められている。
しかし2011年7月頭、このJWSTの開発に大きな問題が立ちはだかった。アメリカの予算を審査している米国上院歳出委員会が2012年予算の中で、NASAの予算削減、特に科学プログラムの中で多額の予算超過をしているJWSTの開発を中止せよ、という意見が出されたのだ。この意見に対しアメリカ天文学会は即座に声明を出し、JWSTは今後の天文学の発達に大きな貢献をすることが確実であり、技術的な制限もないとして反論している。今後の動きが注目されるところだ。
注:「ラグランジュ点」 地球軌道近辺の5つの特定の位置(L1〜L5)に置いた物体は、太陽・地球と位置関係を保ちながら同じ周期で公転することができるため、これらの位置は衛星の観測ポイントとして利用される。太陽〜地球系のL2は、太陽から見て地球の裏側にある。