太陽の磁場サイクルに異変が? 「ひので」の観測成果と黒点動画
【2011年9月6日 JAXA】
太陽観測衛星「ひので」の観測により、太陽の北極と南極における磁場の対称性が崩れていることが初めて明らかにされた。太陽に長期的な異変が起こっている兆候のひとつとみられる。また、黒点の様子を4日間にわたり鮮明にとらえた世界初の動画が公開された。
太陽観測衛星「ひので」は2006年に打ち上げられて以来、太陽磁場やコロナに関する重要な発見をもたらしてきた。その観測データに基づいた研究の査読論文は今年中に500編に到達する見込みだ。
その「ひので」が、太陽表面で黒点発生前から黒点群が形成されるまでをとらえた世界初の動画が公開された。
下記〈参照〉リンクから見ることができる動画では、磁場の出現にともなってたくさんの細かなフレアが発生し、磁場により彩層(表面)やコロナ(大気)が加熱されている様子や、黒点が崩壊し消えていく様子がわかる。彩層を見ることができるカルシウム輝線で4日間の高解像度連続観測を行ったもので、「ひので」だからこそ可能となった映像だ。
「ひので」の得意分野の1つととして、極域磁場の観測(注)が挙げられる。太陽の南極・北極の磁場は11年サイクルで反転することがわかっているが、2008年夏にマイナス極が強かった北極で、今年7月にはプラス極が強くなっており、反転がもうすぐ完了することがわかった。これは予想よりも2年早いという。
一方で南極の方はマイナス極に転じることなく安定しており、両極の対称性が崩れているという史上初めての観測結果が見られた。このように、通常では見られない南北のサイクルのずれが明瞭に観測されたことから、太陽が従来と異なる状態になっていると推測される。
太陽の活動は通常11年周期で活発になったり停滞したりするが、現サイクルでは非活発な時期が長く、周期が延びていた。ここ1、2年でようやく活動が上昇に転じ黒点やフレアが見られるようになってきたが、その活動レベルは必ずしも高くなく、上述の観測結果を含めて、むしろ長期的に見ると太陽活動は低下していく兆候がはっきりしてきた。
太陽極域には黒点の磁場の源があり、磁場の起源の解明や太陽の活動予測には重要な場所である。「ひので」による極域の精密な観測により、太陽活動の長期変動のしくみが解明されることが期待される。
注:「極域磁場の観測」 赤道付近に比べ極域は視線方向に平坦になるため、より高解像度が要求される。