かに星雲のパルサーから超高エネルギーのガンマ線を検出
【2011年10月12日 CfA】
超新星残骸「かに星雲」のパルサーから、100GeV(ギガ電子ボルト)という非常に大きなエネルギーを持つガンマ線が検出された。パルス天体でこれほど強いガンマ線を出す理論は今のところなく、原因の解明にはより多くのデータや次世代装置を待つ必要がある。
1054年におうし座の方向で起こった超新星爆発は、およそ1ヶ月にわたって昼間でも確認できるほど明るく輝いた天体として、中国やネイティブアメリカンの記録にも残っている。
その爆発後の残骸が「かに星雲」だ。中心には、直径数kmほどの大きさで太陽よりも重い中性子星が存在している。この中性子星は1秒間に30回転という非常に速い速度で回転し、灯台のように規則正しく光を出しているように見えるパルサーである。
このかに星雲のパルサーから届くガンマ線を測定したところ、100GeV(医療用のX線の100万倍、可視光線の1000億倍を超えるエネルギーの強さ)という非常に強いガンマ線が検出された。これほど強いガンマ線をパルサーが放出するメカニズムはまだよくわかっておらず、今回の発見はそのメカニズムの解明に対する大きな手がかりになるものと考えられる。
とはいえ、かに星雲のパルサーのガンマ線強度を説明することができそうなシナリオを解明するにはまだデータが足りない。より多くのデータの取得や、次世代装置の開発が期待されている。
今回の研究では、米アリゾナ州ツーソンのウィップル天文台にある北半球最大の超高エネルギー用望遠鏡VERITAS(高エネルギー放射撮像望遠鏡群)が利用された。口径10mのウィップル望遠鏡と12mのチェレンコフ望遠鏡4つを組み合わせ、ダークマターの謎を解明するために2007年から超新星残骸や遠方銀河、強力なガンマ線バーストの観測を行っている。
地上の望遠鏡で超高エネルギーのガンマ線を検出するためには、ガンマ線そのものを捉えるのではなく、ガンマ線が通過したときに出る微弱な光(チェレンコフ光)を用いる。超高エネルギーのガンマ線が地球大気を通過する際に、短寿命の素粒子のシャワーが発生する。このとき、チェレンコフ光と呼ばれる非常に微弱な青い光が発生するので、それを超高感度カメラによって撮影するとガンマ線がやってきた方向とその強度を調べることができる。