天文学者の興味を惹く、のんびり屋のパルサー
【2011年12月26日 Chandra Photo Album】
NASAのX線天文衛星「チャンドラ」とESAのX線宇宙望遠鏡「XMMニュートン」が、小マゼラン雲にある超新星残骸の中心にパルサーがあるのを発見した。このパルサーは誕生して1万から4万年ほどしか経っていない若いもので、自転周期が18分と非常に遅いことがわかった。
太陽系のある天の川銀河の「お隣さん」とも言える小マゼラン雲。その中に見つかった超新星爆発の残骸の中心にあるパルサーの様子が、NASAのX線天文衛星「チャンドラ」とESAのX線宇宙望遠鏡「XMMニュートン」の観測と、チリにあるセロ・トロロ汎米天文台で得られたデータからわかってきた。
画像の青色はX線で、緑色と赤色は可視光線で取得されたデータから作成したものだ。右側のX線で明るく光っている天体の周りに、丸くぼんやりとした物質があるのは、X線で強く光るパルサーを超新星残骸が取り囲んでいる証拠と考えられる。また、パルサーや超新星残骸の左側には大きな星形成領域があった。
SXP 1062と名づけられたこの天体は小マゼラン雲で発見された最初のパルサーで、地球からの距離はおよそ18万光年である。チャンドラと可視光線での観測によって、パルサーは熱くて重い星と連星系を成していることがわかった。
パルサーは非常に正確な周期で電磁波を出していることが知られている。このSXP 1062はこれまで発見されたパルサーの中でも、その自転周期が18分と特に遅いことがわかった。通常、パルサーは1秒間に何度も回転していることを思うと、驚くべき遅さである。
元々は高速で自転していたパルサーが、現在のように遅くなってしまったのだろうか。パルサーは誕生から1万〜4万年ほど経っていると考えられており、天文学的には非常に若い。もし誕生時は高速で回っていたとすれば、なぜこれほど短期間でこれほど遅くなってしまったのだろうか。その原因はまだよくわかっていない。