銀河系のマイクロ波が、宇宙に満ちる光を明らかに
【2012年2月15日 ヨーロッパ宇宙機関】
ヨーロッパの宇宙背景放射観測衛星「プランク」の全天観測図が公開された。星を生みだす低温ガスやマイクロ波で光る謎の「もや」など、銀河系内で発せられる光を詳細に調べることで、ビッグバンの名残である宇宙背景放射についても明らかにすることができる。
画像1枚目は、星々を生みだす低温のガス雲の分布を表す一酸化炭素の全天図だ。このようなガス雲の大部分を占める水素分子は検出しにくいため、同条件で形成され希薄でも検出しやすい一酸化炭素を観測することでガス雲の分布を知ることができる。こうした観測を地上の電波望遠鏡で行った場合は非常に時間がかかるため狭い領域しか見られないが、「プランク」ならお手のものだ。
「プランク」のマイクロ波画像では、天の川銀河の中心付近にある謎の「もや」も映し出されている(画像2枚目)。これは、超新星爆発で加速した電子が磁場中を通過した時に発する「シンクロトロン放射」と見られるが、スペクトル(光の成分)を見ると、銀河系内の他のシンクロトロン放射に比べ、高エネルギー側での放射の減少がゆるやかという特徴がある。この理由として、超新星爆発の発生率の高さや銀河風、暗黒物質粒子の消滅などの説があるが、はっきりしたことはわからない。
「プランク」によるこうした観測は、銀河内で起きている興味深い物理過程に新たな光を当ててくれる。「プランク」の主な観測目標は、ビッグバンの名残として全天に広がるわずかなマイクロ波(CMB:宇宙マイクロ波背景放射)だ。そのためには今回の画像に見られるような、天の川銀河という「手近な場所」由来の放射分を精密に把握し、観測される全ての光から差し引く必要がある(画像3枚目)。
天の川銀河内の放射について解明が進めば、宇宙背景のさらに精密な測定が可能となり、宇宙の成り立ちやその構造の起源を探る手がかりとなっていくことが期待される。