土星のF環に現れる「氷のミニジェット」
【2012年4月24日 NASA】
探査機「カッシーニ」の画像から、土星の環から氷の粒が引きずり出されて細長い尾のように見える「ミニジェット」が多数見つかった。衛星の重力によって起こる様々な変化を見てとることができる。
NASAの探査機「カッシーニ」の撮影画像から、土星のF環(注)に不思議な「ささくれ」のような現象が見つかった。「F環は、土星のリングの中でも最も奇妙なものです。今回の最新の観測で、思っていた以上にダイナミックな姿が明らかになりました。F環は、大小さまざまな天体が入り乱れるにぎやかな場所なのです」(カッシーニ画像チームのCarl Murray氏)。
約150kmもの大きさを持つ衛星プロメテウスは、F環を波立たせたり、溝や雪玉の塊を形成したりと、さまざまな影響を及ぼすことがわかっている(参照:2010/7/28「土星の衛星プロメテウス、F環に巨大な雪玉を形成」)。そうした雪玉はそのうち衝突や引力で砕けてしまうものと考えられていたが、そのいくつかは生き残り、F環に突入していくことが判明したのである。
大きさ1km前後のこうした小天体は、秒速数m程度の非常にゆるやかなスピードでF環とぶつかり、環から氷の粒を40〜180kmほどにわたって引きずり出す。Murray氏らは2009年1月の撮影画像から、このような尾が8時間にわたってとらえられているのを見つけた。小天体はF環で生まれたもののようだ。さらにカッシーニの画像カタログをあたり同様の現象が写っていないかを調べたところ、7年間に撮影された2万枚もの画像から500例ほどが見つかった(画像1枚目)。小天体が群れを成し不思議な形状のジェットを作っているものや、F環全体がさまざまな天体により波打ったり渦巻いたりする様子もわかった(画像2枚目)。
環の中で何が起こっているかという研究は、太陽周囲のダスト(塵)の円盤から惑星系が進化した際の活動を理解するのにも役立つ。今後もカッシーニによる環の観測研究が続けられる予定だ。
注:「土星のF環」 土星の環は内側からD、C、B、A、…と並んでいる。地球から見えるのはA、B、Cの3本で、A環のすぐ外側にF環があり、さらに外側にも続く。プロメテウスはA環とF環の間に存在している。