活動銀河核を覆うダスト、従来理論より広く分布するものも

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【2012年8月14日 CfA

中心核から強い放射を発する「活動銀河」。その放射を遮る周囲の物質の分布について、これまでの理論と異なるものが存在することがわかった。


活動銀河核を持つNGC 1068

中心に活動的な大質量ブラックホールを持つ銀河NGC 1068。このような銀河の赤外線観測から、中心核の放射を遮る物質の分布がこれまでの考えと異なっているものが存在することがわかった。クリックで拡大(提供:NASA and the Chandra X-ray Observatory)

私たちのいる天の川銀河を含め、ほとんどの銀河の中心には大質量ブラックホールが存在する。その重力で吸い込まれる物質は熱せられ、時として荷電粒子の双極ジェット噴射を発する。こうした「活動銀河核」は、観測のうえで2つのタイプに分けられる。ダストの放射を伴う明るい高速の高温ガスが見られるタイプと、ほどほどの勢いの(あるいはまったく勢いがない)ガスを持つダスト吸収が見られるというタイプだ。

活動銀河核の統一モデルでは、この2種類を含む見かけ上の違いは、地球から見た銀河の角度によるものとされる。上記1つ目は銀河が正面向きで高速ガスがはっきり見える場合、2つ目は横向きの銀河で、銀河中心部からの光がその周囲の物質ごしに見える場合だ。

だが、こうした違いは全てのケースに当てはまるのだろうか。ハーバード・スミソニアン天体物理学研究所の研究者らは、赤外線吸収の要因となる、中心核周囲の物質の性質を詳しく探ることにした。全体に均一で高密度の小さい環状構造なのか、希薄な物質が大きく広がっているのか、それとも高密度な塊が散らばっているのか?

NASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」の赤外線分光器のデータから、比較的近傍にある20個の活動銀河の星生成とダスト吸収を調べたところ、ある程度の割合で、光を吸収するダストがトーラス(環状構造)よりも大きく広がった分布をしていることがわかった。統一モデルとは異なるものがあるということだ。統一モデルに当てはまらないケースが存在するということになる。

このタイプの活動銀河核では非常に活発な星生成が行われており、こうした星生成の兆候を無視して探索を行うと、ダストに覆われた活動銀河核の大部分を見逃してしまうことになるだろうと、研究グループは述べている。